しかしじゃ家康殿…。
お主には分からぬかも知れぬが・・・およよ、何を仰る芥川殿、わしは猿楽の名手とも歌われていたのじゃぞ、それにじゃ、わしらの時代には仏教、禅にたいする理解、認識のみならず、芸術に於いても深い造詣を持つことが天下人としての必須の能力、資質じゃったのじゃ。今の時代の己の権力欲、出世欲だけの雑兵たちとは天と地ほど違うのじゃよ。・・・御意。 大いに失礼つかまつった。許して下され。
それで芥川殿は何が言いたかったのじゃ。 うむ。 この、「渡り鳥」、という歌を聴くとじゃよ。 うむ。 わしは慟哭しそうになるのじゃよ。 御意。 お主がそれほど感応するとは、余程の深さを持った歌手なのじゃろうな。 御意。