「フォールト・ラインズ」、ラグラム・ラジャン著…日経、読書欄から。
評者:慶応大学教授 池尾和人 黒字化は芥川。
今次の米国発の世界的な金融危機を引き起こした主原因は、「金融関係者の貪欲さ」と「規制当局者の無能さ」であるという見方は、広く通説化している。しかし、それでは金融規制を強化し、実効的なものにさえすれば、金融危機の再発を防止することができるのだろうか。
…中略。
著者のラジャンによれば、中でも大きな断層線は、米国における所得格差の拡大である。技術革新が所得格差の拡大につながっている面があり、その是正のためには、変化に対応できる人的資本の形成を促す教育の拡充が求められる。しかし、教育による問題解決には長い時間を要する。米国では雇用保障や各種のセーフティーネットが乏しいことから、政治家は時間をかけていられず、とかく即効的な対策を求めたがる。…中略
他にも、ますます多くの国が輸出主導型の経済成長路線をとるようになった結果、米国が過剰消費を続けることを許容するような世界経済の不均衡が続いていること、また米国政府の景気対策のあり方が金融関係者の誘因構造を歪めて、過度のリスク負担に走らせるようなものだったことなど、いくつもの断層線が未だに存在しているという。これらの断層線を埋める根本的な取り組みなしには、問題を本当に解決したことにはならないというのが本書の主張である。こうした主張は深く説得的であり、昨年フィナンシャル・タイムズ(FT)ビジネス書大賞に選ばれたことも納得できる。
…以下略。
*芥川が、「文明のターンテーブル」、の、タイトルとした書き出しで書いた事と、同じ事だと、芥川は思うし、芥川の解決策も提示したと思っている。