幻想の東アジア通貨統合、西村 陽造著…日経読書欄から。

評者:アジア開発銀行研究所所長 河合正弘   黒字化は芥川。

本書の表題は東アジア通貨統合は幻想にすぎず、この問題を考察するのは意味がないと論じている書のような印象を与える。しかし、実際には日本の観点から、通貨統合への戦略を体系的に整理・検討するのが本書の目的だ。

…中略。

その上で、日本にとって参加・不参加のいずれが望ましいかは自明ではなく、日本は東アジアの地域経済統合には積極参加する一方、通貨統合には慎重な立場をとるべきこと、日本は参加・不参加の両睨みの立場をとるためにも、経済的衰退を最小限に抑える努力を行い、…以下略。

 本書の基本的な考え方には概ね賛成である。ただし中国経済の「量」的拡大が過大評価され、日本経済の「質」的な高さが十分評価されていないように思われる。例えば、中国では政治体制転換、所得格差の縮小、高齢化への対応など、難題が山積している。また日本が財政再建を果たし、少子高齢化に対応できる生産性の高い経済を実現させ、東京市場を競争力のある国際金融センターにして円の役割を高められれば、日本は相当な影響力を発揮できるはずだ。

*この河合氏の意見についても、芥川は、「金融大国になることが何故大事か」の章や、「金融とは、一企業の事ではない、国家戦略のことである」、等の章や、その他の章に於いて、繰り返し書いて来た事と同義であると芥川は思う。

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