先程、週刊朝日編集部から許可を頂きましたので出来るだけ全文を正確に掲載します。
いま日本で何か起きているのか。それは深刻なりーダーシップの不在である。大げさな話ではなく、国家存亡の危機に直面する中、本来ならば国民の命を第一に守るべき政府が、まったく機能していない。この非常事態に政権批判をしている場合ではないとの声もある。しかし、あえて言おう。福島第一原発の危機は「天災」ではなく「人災」なのだ。
ジャーナリスト上杉隆 本誌川村昌代 本誌取材班 黒字化は芥川。
福島第一原発の事故について「メルトダウン(炉心溶融)が始まった」「チェルノブイリも近い」という言葉を使うと、途端に「デマで煽るな」「ベテン師」という過剰反応がわき起こる。枝野幸男官房長官までもが会見で「風評を流すな」と発言し、その流れを後押しする始末だ。
多くは、政府・マスコミの「大本営発表」を鵜呑みにするばかりで、この間、この国がいかに深刻な危機に直面していたのか、幸運にも知らないまま過ごしてきたのだろう。それは、事故を起こした東京電力と、無策の政府にとって、あまりにも好都合な状況だ。
だが、現実がどうだったのか、それはすでに明らかである。
東北関東大震災の発生からI週間あまりたった3月19日、菅直人首相は、野党・自民党の谷垣禎一総裁に 「副総理兼震災復興担当大臣」での入閣を要請した。事実上の民主・自民両党による大連立の提案だが、これを谷垣は「唐突な話だ」と拒否した。
それは当たり前のことだ。このI週間、菅内閣は「まったく問題はない。安心してほしい」と言い続けながら、原発事故への対応にことごとく失敗し、当事者能力のなさを露呈した。揚げ句、結果はすべて裏目。三つの炉でメルトダウンが起こったとされ、事故の深刻さを示す国際評価尺度(INES)は、1979年の米スリーマイル原発事故と並ぶ「レベル5〈所外へのリスクを伴う事故〉」になったのだ。しかも、海外では一般的に「レベル6〈大事故〉」とみなされている。
それが、いまごろになって事情が変わったとして、野党へ連立を打診するのはあまりに虫がよすぎる。それならば、谷垣に総理の座を譲るべきではないか。
いま官邸と東京電力、そして経済産業省の原子力安全・保安院の「魔のトライアングル」は、情報を隠蔽し、責任をなすりつけ合い、いたずらに国民を危険に直面させている。そして、その電気業界をスポンサーに抱え、情報をただ垂れ流すだけの民放テレビの罪は大きい。