私が目指す芸術教えてくれた…「知と愛」渡辺 えり。 朝日新聞、読書欄から。

黒字は芥川。

それからもう一冊、忘れられない本があります。高1の時、表紙に引かれて買った『知と愛』(ヘルマン・ヘッセ著、新潮文庫)。ずいぶん影響を受けました。
 
私が読んだのは古い角川文庫版で、「ナルチスとゴルトムント」という副題がついてました。青年ナルチスは知の象徴、秩序や規律を重んじ聖職者になる。
一方、愛に生きるゴルトムントは、純潔や服従を好まず彫刻家になる。同じ修道院に育ちながら正反対の道を歩んだ2人が再会し、そしてー。
お互いが片割れだったんだとか、人間は知と愛のどちらが欠けても生きていけないんだとか、考えるほどに泣けて泣けて……。
 
男同士の話だけど、どこかエロチックで、芸術をめぐるやりとりも印象的でした。

「芸術は君の人生に何をもたらしたのか」という問いに、「無常の克服でした。人間生活の道化芝居と死の舞踏から、何かが後に残って、永続する」つてゴルトムントが答えるとか。これだ、私が目指す芸術は!と、バイブルみたいに思ってました。 

こうしてみると、今の私の下地を作ったのは10代で読んだ本。本は読んでおくもんですね。

     

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