日本再生政策綱領…「大磯小磯」今朝の日経新聞17面から。

なお先の見えない大震災後の日本の対応を、世界中が固唾をのんで見守っている。原発事故は日本だけの問題ではない。消費マインドも冷え、工業生産も落ち込んで総需要の一時的大幅減は避けられないが、それゆえに。日本の底力が試されている。悲惨な大災害だからこそ、閉塞感に満ちている日本を変える契機として生かす必要がある。
 
子ども手当や高速道路無料化予算を復興財源に振り向けるのは当然だろう。民主党も 「国民の生活が第一」とのマニフェストに沿う修正の名目が立つ。一時所得として貯蓄され波及効果の小さい子ども手当が、復興財源として住宅再建に回れば、乗数効果も大きく総需要拡大に資する。
 
自粛ムードによる需要低迷から、いっそうのデフレに陥る危険もある。今なら日銀は、インフレ招来との批判を恐れず、極めて大胆な金融緩和を実施できるし、そうする責務かおる。現時点で予想をはるかに超える規模の金融緩和を実施すれば、デフレ脱却の糸口がつかめるだろう。これほどの政策機会はまたとない。

関東大震災後はモラトリアムが発令された。資材や部品の調達ができなくなって引き渡しのできない産業や、自粛の影響を受けた企業など、多数の分野での資金調達を、国を挙げて支援しなくてはならない。膨大な復興資金需要は、貸し出し需要不足に困っていた金融機関にとっても新市場である。
 
米国のバンク・オブ・アメリカは、1906年のサンフランシスコ大地震と大火災で全市が壊滅した際、無条件ですべての人に復興資金を貸し出した。それが市民の信頼を集め、1件の事故もなくすべて返済されて、その後の発展の基礎を築いた。
 
今こそ金融機関の出番である。数年後に日本が復興することは明らかで、リスクも少ない。大震災後の円の急騰や株価急落後の反騰は、海外市場が日本の先行きを楽観視し、現在を投資機会と見ていることを示している。日本の金融機関経営者の視野と度量が試されている。
 
世界から称賛される震災後の規律と礼儀正しさ。節電への協力と自粛ムードで東京の夜は暗く出歩く人もまばらだが、世界は日本人の美徳を見ている。大胆な財政支出組み替えと金融政策。政府、日銀、金融機関一体となった復興支援は、日本再生の鍵となるデフレ脱却実現のチャンスである。

日本再生政策綱領(桃李)

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