海江田氏は何に嫌気がさしたのか。…週刊文春4月14日号から。
「もう原発担当は嫌だ。降りたい」
海江田万里・経済産業相が本音を漏らしたのは、三月十二日に福島第一原発一号機が爆発してから、一週間と経たないうちだったという。官邸関係者が語る。
「海江田さんは、政府・東電統合対策本部の政府側代表として、事故発生以来、ずっと東電本社に詰めていた。東電から情報を絞り上げるためのお目付け役という立場で、官邸での閣議にも出ていなかった」
海江田氏は何に嫌気がさしたのか。
「ご存知のとおり、今の官邸は指揮系統がパラパラ。官邸が海江田さんを通さずに、直接東電に情報を上げさせ、頭越しに指示することも多かった」(同前)
海江田氏は周囲に、こうボヤいていたという。
「官邸はこっちには『目立つな、勝手にやるな』というけれど、それで責任だけ取らされたんじゃ、たまったもんじゃない」
三月十七日の原子力災害対策本部会合では、海江田氏が、菅首相から「原子力に詳しいオレがこんな報告書で納得すると思っているのか」と面罵される場面もあった。
「この直後から、海江田さんが『降りたい』と言い出した。後任の原発担当に日立出身で、原子炉設計の経験もある大畠章宏国交相を充てる案まで浮上していました」(前出・官邸関係者)
だが、この人事案は、二十一日になって海江田氏が東京消防庁に対して「原発に放水しないと処分する」と。桐喝”した、と報じられたことで幻と消える。
「桐喝で辞めたとなると、本人にとっても、官邸にとってもダメージですからね。菅首相は『とにかくはやく謝罪しろ』の一点張りでしたが、実は海江田氏本人が本当に消防庁を惘喝したのかは微妙なところで、このニュースを速報で報じた時事通信は、後に海江田氏の名前を消してます。
海江田氏は『違うんだけどなあ。どうして言ってもないことで、謝罪しなくちゃならないんだ!』とキレていました」(経産省関係者)
政府内で菅首相に対する不信感を募らせているのは、海江田氏ばかりではない。
「国家公安委員長の中野寛成氏もその一人です」と語るのは民主党関係者。
コトの発端は、「高圧放水車」による原発冷却作戦だった。
「総理、高圧放水車はあくまで対人を想定したもので、今回のような作戦には不向きです。機動隊員を徒に危険に晒すことになります」
そう進言した中野氏に対して、菅首相は 「とにかく出せ」と押し切っ たという。
「菅首相は東大安田講堂の 放水車のイメージが強いようで、放水車の投入を譲らなかった。中野氏は会議の場で居並んだ警察幹部に{『申し訳ないが協力してほしい』と頭を下げた。さら に菅首相に今回の震災での{死亡者予測数を報告したところ、予想を上回る数字だったのか、菅氏は『そんな。数字を国民に報告できるわけないでしょう!』とまたキレてしまった」(前出・民主党関係者)
震災後の菅首相の対応について、三月二十九日に菅首相と面会した民主党の渡部恒三最高顧問は記者団に対して「よくやっている」と言いながら、こう続けた。「……『よくやっていな い』と言うと、すぐ記事に なるから、それをやろうと いう人もいるけどね」
完全に求心力を失いつつ ある菅首相を尻目に、官邸内で着々と復権しているのが、元「影の総理」こと仙谷由人宣房副長官である。
「仙谷さんは官邸に入るとすぐに、被災者生活支援各府省連絡会議というものを立ち上げましたが、実態は民主党政権が廃止したはずの、事務次官会議です。震災から三週間がたち、今の官邸は意外と静かな印象ですが、仙谷さんの部屋の前だけは、官僚も含めて、仙谷詣でをする人で賑わっています」(別の官邸関係者) その一方で、仙谷氏が影響力を増すのを警戒する人物もいる。以下略。