市場やマスコミのせいで、人々は普段、関心を私的な満足に向けているが、…朝日新聞夕刊から。
…前略。 黒字化は芥川。
米国のノンフィクション作家レペッカ・ソルニットが「災害ユートピア」(高月園子訳)という刺激的な題名の本を昨年暮れに日本で出した。
9・11テロやニューオーリンズのハリケーン被災を例に、人々が過酷な状況下でなぜ助けあえるかを考察する。
いわく、市場やマスコミのせいで、人々は普段、関心を私的な満足に向けているが、誰もが巻き込まれる大災害下では、本当は望んでいる社会的つながりや意義ある仕事が実現するからだ、と。
震災をめぐる人々の行動を見ていると、なるほど、と思う。住民の安全を守るため自らを犠牲にした被災地の人、役に立ちたいと動き出す被災地外の人…。
利他的な動きが日々伝えられている。
人は苦しみを欲し、求めさえもする。意義や目的が示されるならば-。昔読んだニーチェ「道徳の系譜」の一節がしきりに思い出される。 (星野学)