週刊朝日緊急増刊 朝日ジャーナル 知の逆襲 巻頭の、辺見庸…震災前に発行されたものです。
本当の、超抜粋ですが、辺見庸が、ただものではないことは十二分に分かるはず。
…前略。
貧しい者はよりひどく貧しく、富める者はよりいっそうゆたかになるだろう。
すさまじい大地震がくるだろう。
それをビジネスチャンスとねらっている者らはすでにいる。
富める者はたくさん生きのこり、貧しい者たちはたくさん死ぬであろう。
階級矛盾はどんどん拡大するのに、階級闘争は爆発的力をもたないだろう。
性愛はますます衰頽するだろう。
テクノロジーはまだまだ発展し、言語と思想はどんどん幼稚になっていくであろう。
ひじょうに大きな原発事故があるだろう。
労働組合はけんめいに労働者をうらぎりつづけるだろう。
おおくの新聞社、テレビ局が倒産するだろう。
生きのこったテレビ局はそれでもバカ番組をつくりつづけるだろう。
ファシストだかスターリニストだかエコロジストだか市民主義者だかモサドの回し者だかわからない、あやしげな男が人気をはくするであろう。
サイバー・アナキストがふえるだろう。サイバー・スパイ(公安)もふえにふえるだろう。サイバー・ラッディズム(Luddism)が生まれるだろう。第二、第三、第四のジュリアン・アサンジが登場するだろう。
秋葉原事件によく似た無差別殺傷現象が続発するだろう。死刑制度はなくなるだろう。むごい私刑があるだろう。
国家権力と秘密機関がうらでからむ不可思議な謀殺、暗殺、みせかけの「自殺」が連続するであろう。
マスメディアはひきつづき権力の意のまま、いや、いまよりいっそうたくみに偽装された権力の構成要素でありつづけるだろう。
そして、死刑制度復活の声がたかまるであろう。
戦時下でも、たとえ核爆発があっても、ワールドカップ・サッカーとオリンピックはつづけられ、大いにもりあがるだろう。
大手広告代理店が戦争関連CMをつくるだろう。
日本人宇宙飛行士のコメントと日本の新聞の社説は、ひきつづき死ぬほど退屈でありつづけるにちがいない。
あの老人Aの死は、だれの記憶にも記録にものこってはいないだろう。
そしてちかい将来、貧者たちのおおくは、直腸熱が四十五度にもなって、陸続と死ぬのだ。
すべてはthe probableかthe inevitableである。
…後略。