首相の決意が伝わらない…これでは何も言っていないに等しい。…今朝の日経新聞3面から。
国難ともいうべき未曽有の大災害を前にして、完璧な危機対応を望むのは無いものねだりだろう。しかし東日本大震災’が発生して以降、原発事故などで後追いの対応を続ける政府にいらだちを募らせている国民は多いのではないか。
震災1ヵ月に合わせた菅直人首相の記者会見は、被災地の復興に全力を挙げる姿勢を強調することに重点があった。
首相は今後の対応について 「ただ元に戻す復旧でなく、新しい未来を創造する復興でなくてはならない」と力説した。
しかし具体案に関しては「津波被害を受けないよう高台に住む」「自然に優しいエコの街」という以前に言及したアイデアを繰り返すだけだった。新たに付け加えた「弱い人に優しい社会」という言葉も抽象的、情緒的な印象がぬぐえない。
政府は14日に著名な政治学者や建築家らが多数参加する「復興構想会議」の初会合を開く。地域の復興作業は時間との戦いだ。政府内に乱立気味の組織を束ね、官僚組織を動員して実現に結びつけるためには強い指導力が不可欠となる。
首相は復興計画づくりに向けて「地域の要望を尊重する」「全国民の英知を結集する」「未来志向の復興を目指す」との3つの原則を掲げた。これでは何も言っていないに等しい。
「野党にも青写真をつくる段階から参加してほしい」と呼びかけたが、政府・与党がまず方向性を示さなければ議論は深まらない。
本格的な復興には巨額の財源が必要である。民主党内でも「子ども手当、高速道路料金の軽減など重点政策の見直しは避けられない」との声が強まっている。野党は震災直後から予算の大胆な組み替えを求めてきたのに、いまだに明確な方針が定まらないのは政府・与党の怠慢である。
首相は記者会見で、国民に「これからは自粛ムードに過度に陥ることなく普段通りの生活をしていこう」と呵びかUた。被災地を力強く復興する上でも、日本経済をいかに立て直すかという視点が重要になる。
政府が原発事故をできるだけ早期に収拾し、安全に関する情報を適切に発信していく姿勢が経済活動を下支えする。今夏の首都圏などでの電力不足に関しても、国家レベルでの対応力が問われることになる。
危機に際しての政治の役割は、突き詰めれば国家目標を明示し、政策の優先順位をどうするかだ。そうした決断は最終的に首相が責任を持って下さなければならない。
自民党など野党との協力のおり方も「何をなすか」という目的意識が問われる。今の首相の言葉からは、困難な状況をどう打開していくのかという決意が少しも伝わってこない。
(編集委員坂本英二) 黒字化は芥川