そもそも、新聞では、このボリュームの論説を掲載する事も不可能である
月刊誌HANADAに掲載された中野剛志氏と松原隆一郎氏の対談を通じて、新聞では本質的な議論の分量と深度が物理的に不可能である現実が浮き彫りにされる。輸出主導では実質賃金は上がらず、日本は豊かになれないという両氏の指摘に対し、筆者は「内需拡大」とは日本が保有する世界最大級の個人資産を東証に投資させることであると明言する。東証の売買の70%を外資が支配し、円高局面では外資が安全資産として利益を得続けてきた構造を批判し、アベノミクスでようやく日経平均が上昇に転じた背景を踏まえつつ、この本質を中野氏なら即座に理解するはずだと断じている。
そもそも、新聞では、このボリュームの論説を掲載する事も不可能である。
2017-01-29。
今月号の月刊誌HANADA(840円)にも読むべき論文がたくさんある。
仕方なく、こうして登場した頃、私は中野剛志氏を知った。
同時に彼もまた私の文明のターンテーブルの意味合いを真に知っている一人であると私は確信している。
彼と松原隆一郎氏との対談が、p50~p71に渡って、しかも三段組みで特集されている。
そもそも、新聞では、このボリュームの論説を掲載する事も不可能である。
だから新聞では物事の本質は実は伝えられていない。
新聞が伝えているのは、論説委員たちの、よく言えば感情論、悪く言えば、歪んだ思想だけだと言っても過言ではないのである。
私は彼らの対談記事を読んでいて、私がこうして登場した時に言及した事の正しさに、逆説的に気づいたのである。
資本主義は土地の私有財産制を基盤とし、金融と株式市場で成り立っている。
資本主義の上に成り立つ民主主義国家の政治家で、株式市場を無視して政治を行う政治家は一人もいないだろう。
前文略。
しかも間抜けなことに、これは松原先生の本にも書いてあるし、私も何度も書きましたが、輸出主導では日本は豊かにならないのです。
どういうことか。
まず輸出で儲けようと思っている限り、実質賃金はなかなか上げられない。
競争力が落ちるのを恐れるから。
しかも、物価水準の安い海外勢とも競争するのだから、デフレ圧力がかかり続けてなお上がらない。
したがって、輸出主導を極端にやっているこの十~二十年というのは、もう実質賃金が上がらなくなっている。
つまり日本人は、自分たちの首を絞めて、中略…。
本当は、内需を拡大して貿易黒字を縮小していくような成長のほうが豊かになるし、さっき松原先生が言ったように、日本の大国としての身の丈に合っていて世界のためにもなる。
それにもかかわらず、トランプに自由貿易の大切さを説こうとか、輸出主導の成長を続けられるようトランプを説得しようとか、そんな馬鹿な議論を延々としているのがいまの日本です。
後略。
中野さんが一つだけ見落としている事があると私は思った。
私は文明のターンテーブルが回っている国である日本の株式市場である東証の日々の売買の70%が外資に牛耳られている態様を改めるべし、と言いもして、登場した事はご存知のとおり。
両者が指摘している内需拡大とは、日本が持つ世界最大級の個人資産を東証に投資させる事と同義であると私は指摘したわけである。
世界の市場がリスクオフの流れに成ると、必ず安全資産としての円が買われ、日経平均は下落する。
つまり外資にとって日本は絶対的な利益が得られる市場だったのである。
日経平均も20年以上大停滞したままだった。
アベノミクスでやっと上昇したのである。
中野さんほどの具眼の士ならば、私のこの指摘だけで、瞬時に分かるはずだ。