「想定が甘かった」のはGE社だった ― 朝日新聞の原発事故ミスリードの構造
高山正之『変見自在「プーチンよ悪(ワル)は米国に学べ」』より、福島原発事故をめぐる朝日新聞の重大な報道操作を解説。本来「想定が甘かった」のはGE社であり、日本側はむしろ欠陥を改良し安全性を高めていた事実を、朝日が意図的に隠し、東電の過失にすり替えてきた実態を鋭く告発する。
以下は高山正之の、変見自在、「プーチンよ悪(ワル)は米国に学べ」、新潮社1,400円、のp75~78からである。
福島原発事故で一番ワルいのは米国。
3.11から丸2年。
朝日新聞にちょっと驚きの記事が載った。
東電福島原発に駐在した元米ゼネラル・エクトリック社(GE)の責任者へのインタビュー記事だ。
なんで驚きかというと、朝日はあの震災発生時から事故を起こした原子炉がGE社製ということをずっとぼやかしてきたからだ。
例えば発生間もないころの原子力担当編集委員、竹内敬二の「甘い想定」という記事。
「格納容器には弁は『日本では炉心溶融が起こらない』として装備されていなかった。
海外の動きにおされて導入した弁が今は命綱になった。
当初の事故想定がいかに甘かったかを示している」。
これだけだと原子炉は日本製で、ガス放出弁すらつけてなかったと読める。
でも、炉は紛れもなくGE社製で、弁は東電が米国のスリーマイル事故を見て取り付けたものだ。
「想定が甘かった」のはGE社だったのに朝日はまるで東電の想定がなってなかったように仕立てて、以後の原発廃止デマの基にしてきた。
それを今ごろGE社製でしたとやる。
もうほとぼりも冷めたろう。
気づかぬうちにミスリードを手直ししておこうと思ったか。
そのインタビューの中身が凄い。
GEの責任者は沖縄生まれの日本人で基地反対闘争に青春を燃やし、その後、船員をやっていてGEに拾われ、熱中性子も臨界も知らずに沸騰水型原子炉(BWR)専門家になった。
こんなので大丈夫かとふと思うが、受け持った「福島の炉はGEの設計ミスも含め、いくつかの異常な事態も経験した」と明かす。
それは事実で、中でも応力腐食割れは酷かった。
高圧蒸気のパイプや炉心を包むシュラウドが次々割れて放射能漏れが起きた。
発電用タービンも破断し、燃料棒被覆管もだめ。
要するに完全な欠陥炉だった。
炉は運転不能になったが、GEは何もしなかった。
それで東電と東芝など日本のメーカーが協力して解決に当たった。
朝日がムラとか蔑称する仲間たちだ。
そして応力腐食は炭素量の多いステンレスと溶接工程が原因だったことを突き止めた。
割れるタービンも鋳型成形ではなく、日本の技術を生かした削り出し一体型に替えた。
この改良中に今回、最悪の事態を回避できたガス放出弁も収り付けられた。
見かけ以外すべて日本製になったGEモデルの原子炉は以後、3.11の大津波まで故障を知らなかった。
インタビューではこれには触れずに「原発は危くないのか」と記者が誘導し、「東電がいかに安全に無関心か」を、GE駐在員としての苦悩をしみじみ語らせる。
「BWRは熟練していないと対応できない。
五感を研ぎ澄ませ、配管に触れ、震動や温度に異常ないか確かめることもあった」。
彼が確かめた配管はとっくに安全な日本製に替わっていることは言わない。
米国人の嘘つきがすっかり身についた口ぶりだ。
彼が触れないもう一つのポイントが、なぜGEは応力腐食割れなど欠陥を無責任に放置したのかだ。
この稿続く。