最大の格差を生むのは誰か ― ビル・ゲイツと孫正義、そしてそれを称賛したメディア
富が一部の超富裕層に集中すればするほど、社会全体の需要は縮小し、経済は衰退する。ビル・ゲイツや孫正義の巨額資産形成は「最大の格差発生装置」そのものであり、それを無批判に称賛してきたマスメディアこそが共犯者である。ジョン・スティグリッツのニューズウィーク論文を根拠に、日本の格差拡大の本質を鋭く告発する。
つまり金持ちに集まるカネが増えるほど、需要は減る、ということである。
私が恩師から命じられていた「お前は京大に行って、大学に残り、その両肩で京大を背負って立て」という道から完全に逸れ、大阪を舞台に、裸一貫で実業家の道を歩み、単店舗としては日本有数の実績を打ち立てていた頃、仕事を通じて出会った真の人格者である大先輩と親友になった。
彼は日比谷高校から東大法学部を経て、名門大企業の重役を務めた人物であり、しかも大変な読書家でもあった。
ある時、彼が私に言ったのと全く同じ事を、当時、定期的に私の話を聞きに来社していた日経新聞大阪本社の広告局長も言った。
「あなたが話していることと全く同じことを言っている米国の学者がいます。読んだことはありますか」と。
読者はご存じの通り、私が実業家として生きるしかないと決意した瞬間、すなわち本来の学問の世界に戻る道は経済的に完全に断たれたと覚悟した瞬間、私は向こう十年間、観たい映画も観ない、読みたい本も読まないと決め、読書や観劇など一切を断ち、実業に邁進した。
この間、極端に言えば、私は一冊の本も読まなかった。
だから、当時、その学者が誰であるかなど知る由もなかったのである。
しかし後年、あれはポール・クルーグマンか、あるいはジョン・スティグリッツだったのだろうと、私は思うようになった。
今週号のニューズウィーク誌には、その事を改めて認識させてくれる記事が載っていた。
ジョン・スティグリッツの論文である。
その中には、ビル・ゲイツがあっという間に世界一の資産家になった事や、孫正義が総資産五千億円超に達し、日本で一、二を争う大資産家になった事は、実は最大の格差発生以外の何物でもない、と指摘する箇所がある。
ニューズウィーク誌一月十二日号、三十二ページ、「大いなる不調」への処方箋と題した論文である。
前文略。
総体的に言えば、富裕層の支出は貧困層よりはるかに少ない。
つまり金持ちに集まるカネが増えるほど、需要は減る。
同時に、ドイツなど国際収支黒字を維持する国の構造が、需要不足という大問題の原因になっている。
後略。
すなわち、最大の格差発生を行って来たのは、ビル・ゲイツであり、孫正義であり、そしてこれを褒めそやして来たマスメディアなのである。
この稿、続く。