オスプレイ報道はニュースかプロパガンダか ― 沖縄2紙と「オール沖縄」が作る恐怖の物語

月刊『正論』掲載・仲新城誠氏の論文をもとに、沖縄タイムス・琉球新報によるオスプレイ事故報道が、事実検証よりも「欠陥機」「占領意識」「空に凶器」といった感情的なレッテル貼りと反基地運動のプロパガンダに傾いている実態を検証。
オスプレイの実用性や離島住民の声、翁長知事のポピュリズム的な方言スピーチ、「オール沖縄」政治の空虚さを通じて、沖縄報道と政治の歪みを鋭く告発する。

2017-02-23
以下は月刊誌『正論』今月号に掲載された八重山日報編集長、仲新城誠氏の論文からである。
彼が伝えてくれる事実は、トランプ大統領が一部のメディアに対して「おまえはフェイクだ」と罵倒しているのも当然だろうと思わせる、あきれ果てたメディアの実態である。
文中強調は私。
「報道というよりはプロパガンダ色が強すぎると思う」
2014年4月、当時自民党の広報本部長だった小池百合子東京都知事が、沖縄の県紙「沖縄タイムス」「琉球新報」の報道をこう評した。
自民党本部で、私が小池氏にインタビューした際に語った。
小池氏は沖縄担当相や防衛相などを歴任し、沖縄の米軍基地問題にも通じている。
大臣在任中、沖縄メディアの一方的な報道に悩まされたという。
「一つの問題を一つの観点ばかりで書くと、そのほかの部分が掲載されず、バランスを欠く報道になる」
インタビューから3年近くが過ぎ、今になって私がこのやり取りを思い出したのは、2016年12月13日に起こった米軍の新型輸送機オスプレイの事故がきっかけだった。
オスプレイは夜間の給油訓練中に沖縄本島北部の名護市沿岸に着水、大破したのだ。
翌朝、事故を報じる県紙2紙の紙面を見た。
天変地異でも起こったかのような大見出しが、ドーンと視界に飛び込んだ。
「やっぱり落ちた」「欠陥機懸念、現実に」「目撃の住民恐怖」「機体原形とどめず」「占領意識丸出し」(12月14、15日付琉球新報)
「空に凶器 震え 怒り」「抗議非難 高まる声」「欠陥機出ていけ住民ら訴え」「相次ぐ恐怖 生活に影」(12月15日付沖縄タイムス)
紙の新聞とインターネットで読む新聞との一番大きな違いは、ページを横切る大見出しや写真が、視覚を通して脳に与える衝撃の有無だろう。
記事の中身ではなく「欠陥機」「占領意識」「空に凶器」「相次ぐ恐怖」などという毒々しい見出しの迫力に圧倒され、思考が麻痺した。
多くの県民が私と同じ感覚を味わっただろうし、まさにそれこそ、両紙の狙いだったろう。
文中強調は私。
米軍は1月5日、オスプレイの空中給油訓練を再開すると発表した。
稲田朋美防衛相は「オスプレイが空中給油を実施する能力を維持することは、防衛や緊急時の対応の観点からも重要」とコメントしたが、翁長雄志知事は「米軍の要求を最優先する政府の姿は信頼関係を大きく損ねるもので、強い憤りを感じる」と反発。
琉球新報、沖縄タイムスも6日付の社説で「危険な訓練」の再開を「言語道断だ」などと批判する社説を掲載した。
日米両政府は空中給油訓練を陸上では実施しないことを確認しており、万一同様の事故が起こったとしても、一般住民に危険が及ぶ可能性はかなり低い。
しかし両紙は、訓練再開をとてつもない脅威のように誇張して報道した。
オスプレイ事故に関する県紙の一連の報道を見ていると、「欠陥機オスプレイの墜落」というストーリーが先に出来上がっていると感じる。
事故原因は何なのか、オスプレイは果たして欠陥機なのか、事故は墜落なのか、不時着なのかという事実の検証は二の次、三の次のようだ。
海兵隊の撤退要求に結びつけるという結論ありきの意図が明白である。
在沖米軍のローレンス・ニコルソン四軍調整官は事故翌日の記者会見で、県民の被害がなかったことに触れ、「操縦士は沖縄を守った」と発言したのに、琉球新報の記事は「ニコルソン氏の態度や発言は、県民の生命を一顧だにしない米軍の姿を浮き彫りにしていた」と決めつけた。
一連の報道は、具体的事実が曖昧なままに、米軍への敵意だけがむき出しになっている記事や論説が目立った。
まさにプロパガンダだ。
「沖縄民族主義」を煽る知事
沖縄で声高に主張されるオスプレイ批判を聞くと、中世の魔女狩り裁判を思い出す。
オスプレイを否定することは科学の進歩を否定することだ。
反基地派が目の敵にしているこの航空機は、ヘリと固定翼機の長所を併せ持つ技術革新の精髄である。
航続距離、スピードとも従来のヘリを大きく上回り、沖縄本島から400キロメートル以上離れた尖閣諸島も作戦範囲に入る。
八重山諸島などの離島住民は、重傷や重病患者が発生し、地元の病院では対応できない場合、自衛隊のヘリで患者を沖縄本島に輸送している。
救命活動は一分一秒を争う。
日本最西端の島、与那国島に住む与那原繁さん(54)は「オスプレイは給油なしで沖縄本島と与那国島を往来でき、しかも普通のヘリより速い。島では導入を期待する声も大きい」。報道に幻惑されない住民も多いのだ。
少なくとも八重山では、事故をきっかけにオスプレイへの反発が燎原の火のごとく住民に広がっているという事実はない。
沖縄では「開発段階で事故が多発した」ことを名目に、既に実用化されているオスプレイが「欠陥機」扱いされ、「配備撤回」が政治的スローガンと化してしまっている。
「欠陥機オスプレイ」を「海兵隊撤退」のカードに使おうという反基地派の思惑で、純然たる技術革新の成果が政争の具にされてしまったのだ。
12月22日、米軍北部訓練場の部分返還に伴う返還式典が名護市で開かれた。
反基地派のオール沖縄会議はこの日に合わせて「欠陥機オスプレイ撤去を求める緊急抗議集会」を同じ名護市内で開き、主催者発表で約4200人を動員した。政府から返還式典への参加を要請された翁長知事も抗議集会に出席。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を改めて訴え、「新基地は造らせない。オスプレイ配備を撤回させる。マキテーナイビラン(負けてはいけない)」と沖縄方言の叫びで決起を促した。
スピーチに方言を織り交ぜて県民を駆り立てるのは翁長知事の常套手段だ。
「沖縄民族主義」に火をつけて政府との対立を煽っているようにも見え、私は好きではない。
方言が沖縄と本土を分断する道具に使われるのは悲しい。
同じ沖縄でも、沖縄本島と宮古諸島、八重山諸島の方言は全く異なる。
私たちには知事が何を言っているのか分からない。
少なからぬ離島住民が、知事がスピーチで方言を使うたびに「所詮は沖縄本島だけの知事なのか」と冷ややかな視線を送っている。
それはともかく、この集会に出席した「オール沖縄」の国会議員たちの「反オスプレイ」発言はどれも聞くに堪えぬ内容だった。
「欠陥機でないというなら、安倍総理、どうぞ、総理専用機にオスプレイを使ってください。稲田大臣、機体をピンクに塗って、喜んでオスプレイを使ってください。ただし沖縄の上空でオスプレイを飛ばすことは絶対に認めない」(自由党の玉城デニー衆院議員)
「オスプレイは間違いなく構造的欠陥を持った飛行機だ」(社民党の照屋寛徳衆院議員)
「沖縄県には69カ所もオスプレイの着陸帯がある。ほとんどが住宅地のすぐ近くだ。すべての着陸帯の撤去へ、翁長知事とともに力を合わせて頑張ろう」(共産党の赤嶺政賢衆院議員)
責任ある立場にある政治家が、確たる根拠もないまま、オスプレイが今にも落ちるような言説を繰り返し、県民の不安を煽り立てている姿は情けない。
これが「オール沖縄」に牛耳られている沖縄政治の現状である。
私は、知事の抗議集会出席はポピュリズム(大衆迎合主義)の極みであると思う。
米軍北部訓練場の返還とは本来、知事が簡単にそっぽを向けて済むような軽い話ではないはずだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


上の計算式の答えを入力してください