中国共産党の代弁者か…これらの重大事実に、選りに選って「平和と人権」を標榜する公明党が目をつぶるのだ。  中国に対話を持ちかけて、公明党はどうしようというのか。

以下は、先日、産経新聞の下段広告で見て、これは必読、と近所の書店で購入した櫻井さんの「赤い日本」の序章からである。
本著でも彼女は最澄が定義した国宝、それも至上の国宝であることを証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。
はじめにー国家ではない日本
「規定がない」 
令和3(2021年)3月23日、日本政府を代表して政権の意図するところを発表する立場の官房長官、加藤勝信氏が質問に答えてこう語った。 
「わが国には人権問題のみを直接、あるいは明示的な理由として制裁を実施する規定はありません」 
中国の新疆ウイグル自治区では100万人を超えるウイグル人が収容され、強制的に中国人化教育を受けさせられている。
イスラム教徒のウイグル人を中国人化するということは、まず、イスラム教の信仰をやめさせ、ウイグル人らしく生きることを禁ずるということだ。
また若いウイグル人女性を収容所を管理する漢族の中国人が集団で強姦し、指示に従わないウイグル人にはひどい責め苦が待っている。
拷問で障害が残ったり死亡したりするケースも続いている。
ウイグル人の人口を減らすためにウイグル人男女への不妊手術も横行している。
こうした事例は、勇気を振るって実名で告発し始めたウイグル人の証言によっても明らかにされている。
また中国政府当局の不妊手術件数などの統計によっても裏付けられており、国際社会に広く知られるところだ。 
中国政府による異民族弾圧は今に始まったことではない。
チベット、モンゴル、ウイグルに対する弾圧と迫害は香港にも及び、中国はその魔の手を台湾にも伸ばそうと準備中だ。
中国の弾圧と迫害の歴史は途切れることがなく、中国は紛れもなく人道に対する罪を犯し続ける世界最悪の国である。
その汚れた人権弾圧国に対してわが国政府は非難声明を出さないのかという質問に対する答えが、前述の官房長官発言だった。 
米国はトランプ政権の国務長官、マイク・ポンぺオ氏が21年1月19日、中国共産党政権のウイグル人弾圧を民族大虐殺(ジェノサイド)に認定した。
ウイグル人弾圧を、時効のない人道に対する罪として中国の責任を厳しく問うと明確に断じたのである。
トランプ政権と同じ政策をバイデン政権も受け継いだ。
新国務長官のアントニー・ブリンケン氏はポンペオ発言のあった同じ日、上院の公聴会でウイグル人弾圧について問かれ、「ポンペオ氏同様、中国政府によるジェノサイドだと認定するに同意する」とハッキリ答えたのである。 
トランプ氏からバイデン氏への政権移行に先立って、議会(立法府)も上院は全会一致、下院は反対一票のみという圧倒的支持を得て中国を非難し制裁を科す法案を可決済みだ。
国務省は21年3月30日、「人権報告書 2020年」で中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人に「ジェノサイドと人道に対する罪」を犯していると、明確に主張し、公表した。 
ヨーロッパにおいても同様の批判が起きている。
欧州連合(EU)とイギリスは米国、カナダと共に中国政府当局者に対する制裁措置を発表した。
オランダはカナダと共に中国共産党のウイグル人弾圧はジェノサイドだと認定した。 
にもかかわらず、わが国は何のメッセージも発信していない。
そのことを問われて、わが国政府は「規定がない」としか、言えないのである。
この稿続く。 
「菅総理の訪米前はやめてくれ」 
ここで100年程歴史を遡りたい。
第一次世界大戦で戦勝国の仲間入りをした日本は、明治の開国から約50年、国際社会の新参者だった。
当時の日本は著しく台頭しつつあったとはいえ欧米列強から見ればアジアの小国のひとつだ。
アジア全体が欧米諸国の力と支配の前で圧倒されていた時代に、それでも日本はアジアの代表としてパリ講和会議で堂々と主張した。
第一次世界大戦後の世界秩序の基本となる国際連盟の規約に人種差別撤廃条項を入れるべきだと。
日本は当時、中国・山東半島の権益を確保するために人権問題を相打ちで出した面も確かにある。
きれいごとばかりではなかったが、それを差し引いても、実に立派な主張だった。
人類史上初めて人種差別撤廃を国際秩序の基本に据えようと提唱したわが国の功績を忘れてはならない。 
日本の先達にはわが国が守るべき価値観が明確に見えていたのである。
国家というもの、国家の集合体である国際社会というものは常により良い価値に向かって進んでいくべきだという信念を当時の日本は持っていた。
日本らしさの真髄をなす価値観を国際社会で謳い上げ実践することが日本人だけでなく全ての人々にとって幸せでよい結果を生むとわが国の先達は確信していたのである。
日本の提案は米国の不条理な主張によって葬られたが、大事なことはわが日本国が人類の目指すべき新しい普遍的価値観は人種差別撤廃なのだと世界に向けて問題提起したことだ。 
100年後のわが国はどうなっているか。
日本政府は規定がないと言う。だが、ないのは規定ではなく、日本国、日本人としての考え方である。
誰が見ても中国共産党の異民族弾圧はおぞましい。人間社会では決して許されない人道に反する犯罪である。
にもかかわらず、わが国政府は隣国の蛮行への当然の批判や拒否の意思を、なぜ表明しないのか。 
取材を通して見えてくるのは中国を気にして公明党が日本の足を引っ張っている実態である。
世界に明らかな中国のウイグル人弾圧、ジェノサイドを日本国として批判すべきだという合意は自民党をはじめ各政党に強い意見として存在する。
にもかかわらず、それが国会決議という形で結実せず、政府に対する強い要求として提案されない主たる理由は公明党が立ちはだかっているからだ。 
日本ウイグル国会議員連盟会長の自民党古屋圭司氏が語った。 
「国会にはウイグル議連、チベット議連があり4月には南モンゴル議連も立ち上げられます。私たちは3つの議連がひとつにまとまって、4月16日の日米首脳会談前に中国非難の国会決議をしたいと考えていました。けれどどうしても公明党が承知してくれません。結果として菅義偉総理訪米前に国会の意志として中国のウイグル人弾圧を批判することができなくなったのです」 
ここで少し説明が必要だろう。各種議員連盟の決議は全会一致を原則とする。オブザーバーの共産党を除く各政党全てが賛成しなければ、国会決議はできない。
それが国会における長い伝統なのだ。「散々意見交換しても、公明党は絶対に国会決議は駄目だと言うのです。連立与党の公明党の意思を無視することは、自民党にはできないのです」と古屋氏。 
国会決議実現に力を尽くした別の議員が匿名で語った。 
「公明党議員の雰囲気を見ると、彼らも決議したがっていると思います。しかし、中国から駄目だと言われているんでしょうね。とにかく菅総理の訪米前はやめてくれ、とそればかりです。対中非難の決議文は当初の強い文言が段々削られて、何ともインパクトに欠ける平たい表現になり果てています。それでも公明党は駄目だというのです」
中国共産党の代弁者か 
山口那津男公明党代表は3月30日、記者会見でこう語った。 
「わが国が制裁措置を発動するとすれば、人権侵害を根拠を持って認定できるという基礎がなければ、いたずらに外交問題を招きかねない」
氏はさらに中国は日本にとって最大の貿易相手であると指摘したうえで「国際的な緊張の高まりや衝突を回避し、(緊張を)収められるような積極的な対話を日本こそ主導すべきではないか」とも語っている(産経新聞3月30日)。 
笑止千万。「平和と人権の党」を標榜する公明党が何を言う。
日本に住んでいるウイグルの人々の多くが、自分と家族の実体験として中国政府の弾圧を生々しく証言している。
世界各国に亡命したり逃れたウイグル人も声をあげている。中国による人権侵害の確たる証拠はこれら被害者の証言がその第一である。
ウイグル人女性へのレイプ、異常に多い不妊手術、イスラム教の禁止なども明白な人権弾圧の証拠である。
これらの重大事実に、選りに選って「平和と人権」を標榜する公明党が目をつぶるのだ。 
中国に対話を持ちかけて、公明党はどうしようというのか。
中国は他国、他民族、他人を欺くことを是とする国だ。巧妙な嘘で上手に騙し、目的を達成するのが賢いやり方だというのが中国の価値観だ。
これまで公明党も日本も世界も、中国に騙されてきた。世界は米国を先頭にそのことに気付き始めた。日本ではまず国民が気付いた。
国民の代表である多くの政治家も政党も気付いた。その中で公明党だけが例外なのか。公明党は中国共産党の代弁者なのかと問わざるを得ない。
「いたずらに外交問題を招きかねない」などと、本気で言っているのか。
心配は無用だ。日本の国会決議によってではなく、ウイグル人弾圧、香港弾圧、尖閣の海への侵略などで、中国自身がすでに外交問題を招いている。
外交問題は私たちが摩擦を起こして生ぜしめたのではない。全て中国が起こしたのである。 
公明党は菅首相の渡米前は国会決議は了承しない、絶対にしない、その代わり、日米首脳会談後なら受け入れると言っているそうだ。
中国の入れ知恵、あるいは圧力の結果だと考えて間違いないのではないか。 
世界に先駆けて行われる日米首脳会談で日米両国が足並みを揃えて中国批判を展開するようなことを中国は何としてでも阻止したいのである。
中国が世界の中で孤立していることを、とりわけ先進諸国によってジェノサイドの国というレッテルを貼られることを、阻止しようとしているのである。
だから、菅首相の訪米前の国会決議は「絶対ダメ」なのであろう。 
私はこの原稿を菅首相訪米前に書いている。16日には菅首相がバイデン大統領と首脳会談を行う。
私たちはその日米首脳会談以降、議連の動きが急展開し、対中非難の国会決議がなされるのを目撃するだろう。
それは公明党が中国共産党の許しを得て、ようやく中国非難の決議に合流するという意味であろうか。
本書が上梓される頃にはその構図がはっきりと形になっているだろう。 
公明党は中国人の日本国土買収に歯止めをかける法案にも抵抗し、同法案を骨抜きにした。
平和と人権擁護を金看板にしながらウイグル問題で中国政府批判を渋りに渋った。何と信用できない政党だろうか。
このような政党が連立与党の一翼を担っている。その結果、中国にまともに向き合えないとすれば、そのこと自体、日本の不幸である。

この稿続く 

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