詩仙堂という原点――宮本武蔵と記憶の交差点
京都を歩き始めた数十年前から、詩仙堂は特別な場所だった。
宮本武蔵の記憶、萬屋錦之介との邂逅、そして新年に届けられた音楽が、時間を超えて重なり合う。
最初に京都を散策していた数十年前、私は、なぜか詩仙堂がとても好きだった。
2016-01-01
今日、WOWOWでは、内田吐夢監督、萬屋錦之介主演の「宮本武蔵」全編を一挙上映していた。
これは、内田吐夢監督、萬屋錦之介、双方の代表作の一つである。
最初に京都を歩いていた数十年前、私は理由もなく詩仙堂に強く惹かれていた。
今も年に十回は訪れている。
詩仙堂は、一乗寺下り松の上、
すなわち、武蔵が吉岡一門とあの壮絶な決闘を行った場所の、すぐ上にある。
さらにその上には八大神社が鎮座している。
自然と、宮本武蔵の姿が常に脳裏に浮かぶのである。
おまけに、読者はご存知のように、私は北新地のある店のオーナーと、
親友と言っても過言ではないほど親しく、
仕事ばかりしていた頃、最も遅い時間に訪れる常連客だった。
そんなある夜、他に誰もいないカウンターで、
難病から回復したばかりの萬屋錦之介と、私は隣り合わせになった。
彼は知人と同席していたが、私と彼の会話は驚くほど弾んだ。
なぜなら、当時の私は、日本の俳優の中で、
彼と勝新太郎だけが、他とは次元の違う本物の俳優だと確信していたからである。
そのことを率直に伝えると、彼は心から喜んだ。
それで一気に話が弾んだのであった。
その映画を録画している最中、
隣のチャンネルで、
アンナ・ネトレプコ、ヨナス・カウフマン、トーマス・ハンプソンによる
「Three Stars in Munich」が、今夕六時三十分から放映されると知った。
これはと思い、観続けた。
これを観ていたすべての人は、同じことを思ったはずだ。
何という新年の贈り物だろうか、と。
これを、世界中の読者と、O君、S君、先生、そして閖上の皆に贈る。
特に終盤は、圧巻としか言いようのない見事さである。