中国の国有企業は、反対や障害を力で排除することに慣れてしまっている。
中国の国有企業が民主主義国家で直面する摩擦。
力による排除に慣れた体質が、インドネシア高速鉄道計画で露呈した。
2016-02-02
以下は前章の続きである。
整備計画では、首都ジャカルタと西ジャワ州バンドンの約140キロを結び、2019年前半の開業を目指すとしていた。
事業費は約55億ドルである。
インドネシア政府は、負担も保証もしない。
事業権期間は50年で、終了後は政府に引き渡される。
着工式典で、ジョコ大統領は、インドネシアと中国の両国政府が協力して着工に至ったと胸を張った。
だが、式典を欠席したジョナン運輸相は、建設許可はまだ出していないと明言した。
必要書類は未提出のままであった。
提出された書類の多くは、インドネシア語や英語ではなく、中国語で記載されていた。
評価のしようがない状況だったのである。
計画では四駅が整備されることになっていたが、そのうち一駅はジャカルタ東部のハリム空軍基地の敷地内に予定されていた。
このため、一部の政治家から、首都防衛に不可欠な施設であるとして、計画見直しを求める声が上がった。
シンガポールの東南アジア研究所の研究者は指摘する。
中国の国有企業は、母国において、反対や障害を力で排除することに慣れてしまっていると。
民主主義国家では、全く異なる対応が求められる。
地域社会を深く理解する努力が、決定的に欠けているのである。