「あなたは市場で日本国債を空売りしているのか」――国益を損ねる財政言説への反問

金融政策と財政政策の限界、企業の内部留保、賃金停滞、格付け機関とIMFの対日認識を巡る歪みを、浜田宏一参与の発言から読み解く。核心を突く一言が、国益を損なう言説の正体を照らす。

2016-02-02

以下は前章の続きである。
1月31日の産経新聞から。
文中強調は私。
クルーグマン教授と私の間には多少温度差があります。
彼の方が伝統的ケインズ政策の考え方です。
野村総合研究所チーフエコノミストのリチャード・クーさんは講演で普通なら金融政策が効くはずなのだが長期間デフレ経済が続く日本ではインフレが起こらないという期待が定着してしまったと語っていた。
おまけにリーマン危機の体験が人々の脳裏にこびりついた。
金融政策だけでゼロ金利のときにインフレ期待を起こすのには限度があるという。
傷を負った経済は財政でしか救えない。
それがクルーグマン教授の考え方でもあるといえます。
参与は積極財政に乗り気ではないのですね。
私は大きな政府というか財政の硬直性の問題を随所に見ているからね。
実際に文部科学省などを見るとトップよりも中堅どころが非常に昔流の論理になっていてひどいことをする。
異次元緩和政策によって円安株高企業収益増という循環が生まれそこから雇用や消費に滴り落ちるトリクルダウン効果も期待外れです。
実際に貧困と富の格差の関係は金融政策では解決できない。
ちょろちょろとしたトリクルダウンではね。
そういう意味ではクルーグマン教授の言うことはわかります。
一番の原因は企業セクターにあるのじゃないかとも思います。
企業は賃金をなるだけ上げず配当も配らないで金融資産ばかりを持つ。
企業のおカネに対する執着流動性が高い準貨幣をいっぱい持つということが岩田規久男日銀副総裁のいうインフレ期待を妨げるんです。
安倍首相は民間に賃上げを強く求めています。
私は以前賃上げについてはマーケットに任せておけと言っていましたが最近は安倍首相と同じように賞金も配ってくださいということに賛成しています。
日本の労働市場に完全競争があるという考え方は間違いですね。
構造要因が障害になっている。
労働需給関係がタイトになって自然に賃金が上がれば外食産業なんかで大変惨めなことはそもそも起こらないはずです。
そういう理由があるときは必要かなと思えるようになってきた。
反論もしません。
対談本には日本の政府債務が深刻だと財務省が喧伝するので海外の主要格付け機関が日本国債の高格付けはまずいと判断してしまうという本田悦郎内閣官房参与の体験談があります。
IMFでは財務省出身幹部が消費税率10%でも足りないと説いていると聞きます。
ワインと同じで日本には格付け機関による格付けをありがたがる風潮があります。
その点で財務省はよく働いている。
省益のために国益をあれしています。
IMFチーフエコノミストは真顔で日本財政は悪いんだろと来る。
そう言い張る旧知のシカゴ大教授にはこの間あなたは市場で日本国債を空売りしているのかと問い詰めてやった。

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