なぜ現地データは報道と乖離するのか— フクシマ風評被害の正体 —

福島での実地調査と報道・ネット情報との乖離に疑問を抱いた海外研究者の証言を通じ、風評被害がいかに作られ、拡散されてきたかを明らかにする論考。

2017-03-17

以下は一昨日ご紹介した月刊誌Voice最新号に掲載されたフクシマの風評被害を止めたい、からである。
見出し以外の文中強調は私。

Claire Leppold

(エジンバラ大学大学院生/元南相馬市立総合病院勤務)米オレゴン州ユージーン市生まれ。
オレゴン州立大学で学士号を取得したのち、国際保健学を学ぶために、エジンバラ大学(スコットランド)の修士課程に在籍(2015年に取得)。
15年5月より16年9月まで、南相馬市立総合病院に勤務したのち、エジンバラ大学の博士課程に進学。
日本に短期留学した経験もあり、今回の滞在中に日本語検定一級を取得。

-転機となったのは、二年前にエジンバラ大学の修士課程に在籍していた際に、福島で調査活動をする日本人研究グループによる特別講義を受講したときですね。

クレア

講義を受けて、これまで福島に対して抱いていたイメージが完全に覆されました。
彼らが示した研究結果が、私の「知っていた」情報とは正反対だったからです。
その講義では、「福島居住者の幼児と子どもに対して行なった大規模なスクリーニング検査の結果、検知可能な内部被曝による悪影響は見られなかった。
一方で、現地では糖尿病や高血圧など放射能とは直接関係ない生活習慣病の増加や、仮設住宅への避難に伴う諸問題が顕著に見られた」ということが説明されました。
私は「現地で調査されたデータが、なぜ報道やネットの情報と乖離しているのか」という疑問を覚えました。
それと同時に、「福島の実態をもっと知りたい。
そのためには現地に赴き、自分の目で真実を見る必要がある」と強く思うようになり、福島への移住を決断したのです。

-その後、クレアさんは日本人グループの紹介を受け福島に住むことになるのですが、ご両親はそれについてどう思われたのでしょうか。

クレア

最初はとてもビックリしていました。
私は、動揺する両親に、被災地の放射能に関する論文や記事をすべて見せて、福島の放射能は決して危険なレベルではないということを丁寧に説明しました。
客観的なデータを示されて安心したのか、両親も冷静に私の話に耳を傾けるようになり、最後は福島への移住を認めてくれました。
私を信じて快く日本に送り出してくれた両親には、いまでも感謝しています。

-素晴らしいご両親ですね。

現在在籍する南相馬市立総合病院ではどのような活動をされているのですか。

クレア

当初は修士論文を執筆するための短期留学というかたちを取っていましたが、修士号を取得してからの一年間はフルタイムで勤務していました。
主に病院が発表する英語論文の編集や翻訳を手伝い、勤務の合間を縫って、研究に関する記事をネットで発信したり、論文の執筆をしていました。

新生児に震災による健康被害は見られなかった

―クレアさんは昨年、2008年から2015年までに南相馬市立病院で生まれた新生児1101人(多胎を除く)を分析し、原発事故後も早産児や低出生体重児の発生率に変化はなかったとする研究結果を発表されました。

この稿続く。

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