封印されかけた真実――国連回答が「幻」になった理由

日本政府は国連女子差別撤廃委員会への完璧な回答案を用意していたが、日韓合意により再調整され“幻の回答”となった。最終的に、吉田清治証言と朝日新聞報道の問題点が国連の場で口頭説明されるに至った経緯を検証する。

2016-02-21

日本政府は昨年八月、国連女子差別撤廃委員会から慰安婦問題に関する質問を受けた。
その後、回答内容の検討を続け、当初は十一月中旬の提出を予定していた。
政府関係者によれば、その時点で用意されていた回答案は、A4用紙十枚以上に及ぶ完璧な内容だった。
回答案は、慰安婦問題が政治問題化した経緯を詳述していた。
平成五年の河野談話作成時の事務方トップ、石原信雄が、軍や官憲による強制募集を裏付ける客観的資料はないと証言した事実にも言及していた。
「慰安婦狩り」を証言した吉田清治や、朝日新聞についても説明していた。
しかし分量が多いとして簡潔化が図られた。
それでも、誤った事実関係がクマラスワミ報告書などの根拠となっていることへの強い問題提起は残された。
だが、昨年十二月二十八日の日韓合意により、回答は再調整され、“幻の回答”となった。
合意を破棄しないという不文律の下で、岸田外相の記者会見内容のみが記される形に改められた。
これに対し、衛藤晟一首相補佐官が異論を唱えた。
官房副長官の萩生田光一も同調し、安倍首相は再調整を指示した。
その結果、吉田清治と朝日新聞については、質問の有無にかかわらず、杉山晋輔外務審議官が口頭で説明する方針が固まった。
十六日の女子差別撤廃委員会で、杉山が条約締結以前の問題を扱う不適切さを述べると、委員から反発が出た。
この稿続く。

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