教育現場をめぐる攻防— 左偏向批判と朴槿恵政権の決断 —
韓国の教職員団体をめぐる長年の対立と、左偏向教育への批判、そして歴代政権が手を付けられなかった領域に朴槿恵政権が踏み込んだ経緯を検証する。弾劾デモに現れた過激スローガン、反米・親北朝鮮認識の拡散、教育と政治の結節点を明らかにする。
2017-04-05
左偏向へと引導すると批判されていたが、歴代政権は激烈な反対にあうことを恐れ、手をつけられずにいた。
以下は前章の続きである。
今回、朴槿恵弾劾デモで中核を担った750あまりの団体のなかには、「李石基釈放」「革命政府樹立」のプラカードを掲げ行進する団体もいた。
朴槿恵は、政権に批判的な全国教職員労働組合を法外団体に指定した。
全教組と政権との対立は1960年代に遡る。
1960年5月に結成された同団体は反政府色が強かったため朴正熙政権時代に解散させられ、90年代末まで法外団体であったが、1999年1月に合法化されるも朴槿恵政権下で再び法外労組に指定された。
表向きの理由は解職教員を組合員と認めているからだったが、民主化教育を標榜して反米・親北朝鮮認識を広めていると見なされたからである。
朴槿恵の全教組に対する不信感は根強かった。
2005年12月、私立学校法に反対するハンナラ党大会の演説で、当時代表であった朴槿恵は、全教組に子供たちを任せられない、私学を全教組が掌握すれば子供たちは訳も分からず反米を叫ぶだろうと批判した。
2012年刊行の『グッバイ、全教組』(ナム・ジョンウク)によれば、全教組主催の民族統一大行進では、ソウルの米軍基地を見学した小学6年生に、米軍が勝手に土地を占領しているのが悔しくて涙が出たと書かせていた。
全教組は小中高生を左偏向へと導くと批判されていたが、歴代政権は激しい反対を恐れて手をつけられなかった。
そこに朴槿恵はメスを入れた。
この対北朝鮮強硬姿勢は野党と進歩勢力の強い憎悪を買う。
韓国左派勢力の特徴は、北朝鮮に寛容で米国や日本に厳しい点にある。
後略。