敵国条項という軛――国連憲章が内包する日本の致命的制約
国連憲章に残存する「敵国条項」が、日中衝突時に中国の対日軍事制裁を正当化しかねない構造的危険を論じる。日本がいまだ国際社会で「戦争責任国」として扱われ続けている現実と、憲法九条以上に深刻な制約の存在を明らかにする。
2016-03-01
以下は前章の続きである。
敵国条項という軛(くびき)
では、日中がついに衝突するとなればどうなるか。
軍事力それだけを比較すれば、海上自衛隊の力は中国海軍には負けないだろうし、航空自衛隊も中国空軍に負けるとは思えない。
しかし日本は、「戦争できない国である」という大前提があることを忘れてはならない。
昨年、安全保障法案が成立し、朝日新聞などは「戦争できる国になった」などと囃し立てたが、とんでもない話だ。
憲法九条の制約のみならず、日本は国連憲章における「敵国条項」を現在も背負っている。
敵国条項を端的に言えば、第二次世界大戦中に敵国(枢軸国)側にいた国が軍事行動を起こした場合には、安保理に諮ることなく当該国に対して制裁を行ってよい、とするものだ。
具体的には国連憲章第五十三条、第七十七条一項b、第百七条に規定されている。
国連、つまり国際社会ではいまも“犯罪者”扱いである日本が、常任理事国である中国の挑発に対して行動した場合、この「敵国条項」を以て中国の日本に対する軍事制裁が正当化されてしまうことになる。
この稿続く。