憲法も敵国条項も改められぬ国――安倍総理が選び取った「生き残る国益」
憲法改正も敵国条項の撤廃も実現できない日本が、日中衝突の現実を前に直面する安全保障の根源的制約を論じる。河野・村山談話の「歴史の恥」を残す国益と、現在の国民の生命・財産を守る国益の間で、安倍総理が選択した決断の意味を明らかにする。
2016-03-01
以下は前章の続きである。
となれば、日中衝突が現実味を帯びてきた際、日本はなんとしてもアメリカの協力を取り付けておかなければならない。
第一次安倍内閣時代のことだったと思うが、総理にお会いする機会があった際にこのような質問をしたことがある。
「もし、アメリカが日本を見放したらどうなりますか。
PKOなどでも、日本が国内の議論でもたもたしている間に、そのうち中国が『それならうちから出しましょう』と言い出しかねない。
そんなことになったら、日米安保は吹っ飛んでしまうのではないですか」
すると安倍総理は非常に深刻な顔で、「私が最も心配しているのは日米関係なのです」と述べた。
日本は憲法改正もできず、敵国条項さえも撤廃できていない状態である。
河野・村山談話の継承によって日本人の、よりによって嘘から始まった「恥」を末代まで残す危険性を除去しなければならないという「国益」。
そして、現在の日本国民の生命・財産を守るという「国益」。
この二つの国益の間で、安倍総理は後者を内閣の責任として選び取ったのである。
この稿続く。