大笑いして読んだ中国「婚活」――石平China Watchの痛快な現代中国論
2016年3月、産経新聞連載「China Watch」から石平氏の論考を紹介し、現代中国の婚活事情を描写。大胆な行動様式と社会風潮をユーモアと批評で浮き彫りにし、中国社会の価値観と歪みを考察する。
2016-03-10
石平さんの論文は梅田に向かう地下鉄の中と梅田のスターバックスで読んだのだが大笑いしてしまった
石平さんの論文は、梅田に向かう地下鉄の中と梅田のスターバックスで読んだのだが、大笑いしてしまった。
以下は石平さんがChina Watchと題して産経新聞に連載しているコラムからである。
題字以外の文中強調は私。
現代中国の「婚活」事情
今月1日、筆者の出身地、四川省成都市で、こんな出来事があった。1人の中年男が、街の一角に布団や食器や衣類などの簡素な生活用品を「自分の全財産」と称して展示しておき、通りがかりの女性たちに対して結婚相手の募集を行ったのである。男は自称38歳、月収は6千元(約10万円)、両親に迫られてこのような行動に出たという。
求める相手は30歳から40歳までの普通の女性。字が読めて100以内の足し算・引き算ができ、洗濯と料理してくれる人であれば十分だと本人がいう。
「募集要項」自体はつつましいが、行動はけっこう大胆であろう。衆人環視のなかで「一人劇団」の婚活を堂々と行ったところに、日本流の「つつましさ」や「恥ずかしさ」とは無縁の現代中国人の気質があるのである。
大胆さに関していえば女性も同じだ。
1月21日、河北省平泉県の街の数力所で、同じ内容の「結婚相手募集」の広告看板が立てられた。縦約2m、横幅は4m以上もある「巨大看板」には、1人の女性の全身写真が等身大以上に印刷されていて、被写体本人の結婚相手を募集しているのである。
さすがの中国でも、それは地元のニュースとして注目され、ネットを通じて全国的にも拡散された。
看板広告の効果は絶大なものである。
すべての中国人女性がそんなことをできるわけでもないが、何はばかることなくそれほど大胆な広告を堂々と出せるところは、今時の中国人ならではのことであろう。
一般人の婚活でもそれほど派手なものだから、金持ちの嫁探しとなると、そのやり方はまた、日本人の度肝を抜くものとなる。
今年1月、中国企業家独身者倶楽部は広州市内の五つ星のガーデンホテルで「お見合いパーティー」を催した。
パーティーと言っても、男性参加者の「企業家独身者」は11人だけ、個人資産は平均して3・6億元(約63億円)を有する大富豪ばかりである。
パーティー参加のために、彼らは士人ずつ、9万9999元(約175万円)の代金を支払っているという。
この11人の大富豪の婚活のために、全国から320人の美女が嫁候補応募者として集まったのである。
320人の女性は全員、全国各地での「予選」を勝ち抜いて意気揚々と乗り込んできたものだが、ここで彼女たちを待っているのは、さらに厳しい「審査」である。
まずは広州某整形病院の副院長が女性たちの美貌をいちいちチェックして、それが「整形もの」なのか本物なのかを鑑定する。
次には「性格測定」の専門家が女性たちと雑談して、相手がどういう性格の持ち主であるかを判断する。
最後に登場してくるのは人相占い師、目の前の女性が未来の旦那に「福」をもたらすような人相であるかどうかを吟味するのである。
全体の審査において、この判断こそがもっとも重要視されているらしい。
以上の何重もの難関を突破して女性たちはやっと、大富豪たちの目に触れるパーティーに参加できるようになる。
今回の場合、最後に残った女性は六十数人であったが、彼女たちの一体何人が、念願の大富豪夫人になれるのか。
上述のような「審査プロセス」を記事で読んだとき、「偉大なる中国人民」の創意工夫とこまめさに感心しながらも、このような創意工夫と真面目さをモノづくりに注げば、「中国製商品」の評判がもうちょっと良くなるのにと思った。
その一方、大富豪夫人にたりたい一心で自分自身をまるで「商品」のサンプルであるかのように差し出し、「品定め」に応じる女性たちの行動と、その背後にある中国社会の風潮を思えば、やはり寂しい気持ちになるのである。