「期待」だけで国家のエネルギー計画を論ずる危険性

再生可能エネルギーへの過度な期待が、原発技術の放棄とエネルギー安全保障の崩壊を招く危険性を、具体的なコスト比較と技術的制約から論じる。国家の存亡に直結するエネルギー政策を、理念や幻想ではなく現実から考察する論考。

発信日:2016-03-16

国家のエネルギー計画を決めるのに、絵に描いた餅のような「期待」だけで論ずるのはあまりにも危険である。
話を「独白録」に戻す。
いまだに経産省は「原発のコストは安い」と言っている。
それは核燃料を燃やして電気を作る時だけだという主張がある。
原発を建てて動かすために、どれだけの税金を使っているのか。
公民館を作る、プールを作るなど、さまざまな交付金を与えなければ自治体は原発建設を認めない。
これから廃炉にするにしても、研究者養成や廃棄物の捨て場所作りに多額の税金を投入しなければならない。
事故が起きた場合の賠償も、電力会社だけでは到底まかなえない。
それらはコストに入っていない、という主張である。
しかしこれは嘘である。
経産省の各電源コスト試算は、公民館や交付金どころではない、はるかに莫大な額にのぼる賠償費用まで含めたものである。
それでも原発は、1キロワット時10.1円で最も安いという結論が出ている。
太陽光(メガ)は24.2円。
風力(地上)は21.6円。
地熱は16.9円。
LNG火力は13.7円。
バイオマスは12.6円。
石炭火力は12.3円。
水力は11.0円である。
2016年4月から電力小売りが自由競争になる。
風力、太陽光、地熱、小水力、ガス、バイオマス。
原発より安い電力が得られれば、自由化で原発は成り立たなくなるという。
国民も経営者も安い方を使うという。
そして原発必要論者は、政府がもっと支援しなければ原発は成り立たないと言い出した。
原発は税金投入なしでは続かない産業だというのである。
しかし「原発より安い電力が得られたら」などと簡単に言うが、現実は極めて厳しい。
風力発電では、イギリスで低周波騒音による頭痛や体調不良を訴える人が増えているとの報告がある。
北海道では、国の天然記念物であるオジロワシが風車に衝突して死ぬ事故が相次いでいる。
いわゆるバードストライクの問題である。
地熱発電は実用化されているが、2年に1本のペースで約5億円の蒸気井戸を掘らねばならず、小規模発電所の経営を圧迫する。
2年もすると、井戸のパイプ内面に年輪のようにシリカが付着し、蒸気の流路を狭める。
蒸気中には亜硫酸ガスなどの腐食性気体が含まれ、復水器を腐食させる。
復水器の真空度が上がらないため、蒸気タービンの効率も上げられない。
ランニングコストは非常に高い。
ガスについても、米国ではシェールガス革命がもてはやされたが、農家の井戸から天然ガスが噴き出し火災になる事故が起きている。
大気中に多量のメタンが放出されることによる地球環境への技術的アセスメントが求められている。
小水力は、そこまでのポテンシャルにはなっていない。
バイオマスはドイツでも6%を占め、再エネの中では最もポテンシャルがあると考えられる。
剪定枝を燃料にすることで、人の手が入り、里山を保護する作用も働く。
さまざまな技術開発が見込まれていることは事実であり、再生可能エネルギーの開発を推進すること自体は必要である。
しかし、これらに過大な期待をかけ、ここまで高めてきた原発技術を捨て去ることは、国家の基幹エネルギーの一つを放棄することを意味する。
それはエネルギー安全保障の観点から、国家の存亡を賭ける行為になりかねない。
朝日などのメディアと、それに同調してきたいわゆる文化人たちは、すでに韓国や中国の望み通りに、日本の国力をあらゆる面で落とし続けている。
すなわち、国家の存亡を賭けているのである。
以下は、「読者はご存知の通り、韓国と中国は、正式に政府決定して、新規に原発を大増設する」と題し、2016年1月5日に発信した論文からである。
韓国政府は、日本海に面した江原道三陟と慶尚北道盈徳に最大8基の原発を新設する計画を決めた。
2030年までに計19基を建設する計画である。
現在稼働中の21基のうち15基がすでに日本海側に集中しており、新設分もすべて日本海側となる見通しである。
国家のエネルギー計画を決めるのに、絵に描いた餅のような「期待」だけで論ずるのは、あまりにも危険である。
この稿続く。

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