高實康稔の活動と、韓国・北朝鮮・日本メディアを貫く連動構造
軍艦島をめぐる虚偽史観の形成において、日本国内の資料館関係者である高實康稔の活動が、韓国国会の調査法制、北朝鮮関連団体、そして日本の主要メディアにまで連動して活用されてきた実態を、産経新聞の記事を基に明らかにする。
高實の活動を韓国も活用した。
2017-06-07
以下は前章の続きである。
資料館は7年10月に市民団体「長崎在日朝鮮人の人権を守る会」の代表だった長崎大名誉教授の高實康稔が、平和活動家で牧師だった岡正治の遺志を継いで、仲間と開設した。
4月に死去した高實について、地元の長崎新聞は1面で訃報を伝え、社会面で「加害の歴史 実態解明に尽力」の見出しで評伝を掲載した。
27年10月、高實は資料館を訪問した韓国人学生に「朝鮮人はいつもじめじめしている軍艦島の劣悪な住居環境の中に住まわされていた」と話した。
資料館は端島をこう説明している。
「陸地から孤立されたこの島で、強制連行者たちは想像を超える劣悪な労働環境のなかで、残酷な暴力をふるわれながら死闘の日々を送った。
彼らは端島を『地獄島』と呼んだ」。
高實の活動を韓国も活用した。
韓国国会は2004(平成16)年3月、「日帝強占下強制動員被害真相糾明等に関する特別法」を制定し、真相糾明活動のための委員会を立ち上げた。
その結果をまとめた報告書が28年6月に発表され、高實と資料館の名前は、資料収集と現場調査を支援する「海外諮問委員」として明記された。
報告書は序章でドイツと日本の対応を比較した。
「ドイツも当時を反省し、ナチスが犯した歴史の罪を世界中の人々に発信するなど国家としての責任を果たしている。
しかし、アジア太平洋戦争の加害国である日本は、朝鮮人強制動員の被害者に与えた非道な行いと、その被害に対する真摯な謝罪と反省をすることなく、現在に至っている」。
高實は北朝鮮との交流にも取り組んだ。
28年11月には、北朝鮮「金剛山歌劇団」長崎公演の実行委員長も務めた。
朝鮮総連の機関紙・朝鮮新報によると、高實は「日本政府による朝鮮敵視政策、朝鮮学校に対する排外主義政策がまかり通っている状況を打開しないといけない」と語った。
高實は、昭和46年に韓国陸軍保安司令部が「北朝鮮のスパイ」として逮捕し、政治犯として投獄された立命館大学特任教授の徐勝ともつながる。
高實は投獄された徐と、徐の弟の救出を目指す「二徐兄弟を救う会」の会員でもあった。
徐が平成6年に九州で行った講演を聞いた高實は、翌年に出版された『私たちは人間的な姿で出会い、ともに暮らせるのか』(童話館ブックレット)の巻頭に、こう記している。
「徐氏の講演は、統一を志す運動の継続の証であるとともに、統一の『邪魔をしない』こと以上の悪意をもつ日本の政治と、未だに『苦痛を分かち合う』ことを望まない日本の主権者たちに、欺瞞なき反省と根本的な意識の転換を求めるものでした」。
その徐が「一番弟子」と呼んだ学生は現在、朝日新聞の記者として記事を書いている。
(敬称略)