通信は安全保障である――スプリント買収が露呈した致命的誤算
スプリント買収後に顕在化した巨額赤字と技術的失速を軸に、通信が国家安全保障に直結する以上、中国マネーが使えないという現実を浮き彫りにする。孫正義の戦略的行き詰まりと、撤退か消耗戦かという二者択一を論じる。
2016-04-02
以下は http://www.sentaku.co.jp/category/economies/post-3893.php からである。
文中強調は私である。
ソフトバンクの孫正義社長が、米移動体通信三位のスプリント買収を発表してから二年半が過ぎた今、その誤算は誰の目にも隠しきれなくなっている。
ソフトバンクの時価総額は、同社の虎の子であるアリババ株保有分とほぼ同額であり、ソフトバンク本体の市場価値はゼロと言っても過言ではない。
命運を懸けたスプリントの赤字は、雪だるま式に拡大の一途をたどっている。
もはや、この命綱は現金焼却炉と化し、勃興を遂げた孫王国は暗転への序章に差しかかった。
スプリントの純損失は、二〇一三年の三十億ドルから一四年には三十三億ドルに膨らみ、二年で六十三億ドルが吹き飛んだ。
フリーキャッシュフローは二年間で八十一億ドルのマイナスである。
買収発表時の自信満々の記者会見とは、あまりにも対照的である。
その後の巨額投資にもかかわらず、スプリントの浮揚どころか、本家本元であるソフトバンクの財務改善の兆しすら見えない。
有利子負債は初めて十兆円を突破した。
顧客流出は止まらず、後払い契約者数は減少を重ね、ARPUは下落し、解約率は上昇し続けている。
原因は明白で、ネットワーク速度、すなわちLTE化の致命的な遅れである。
WiMAXを中核に据えた過去のインフラが、技術的な負の遺産となり、今さら地権者交渉からやり直している。
他社が前に進む中で、スプリントだけが穴を掘っている状態だった。
二強であるベライゾンとAT&Tとの差は、もはや規模も財務体力も歴然としている。
消耗戦が続けば、既に十兆円の借金を抱えるソフトバンクに勝ち目はない。
その上、今のソフトバンクには「アリババの資金力」という裏技があるように見える。
ところが、通信は安全保障に直結することから、中国マネーはまず使えない。
撤退すれば再参入は極めて困難であり、残ればさらなる資金注入と消耗戦が待っている。
撤退か、さらなる消耗戦か。
スプリント事業の将来は、この二択しかないのである。