「朝日新聞は悪い」――知の巨人が見抜いていたメディアの罪

渡部昇一の追悼の場で想起された一言、「朝日新聞は悪い」。
それは感情論ではなく、捏造報道と人格破壊、そして自殺に追い込まれた数々の事例に裏打ちされた、冷徹な事実認識だった。
本章は、日本の言論空間を蝕んできた新聞の構造的罪を記録する証言である

2017-07-06

三年前の八月に朝日新聞の購読を止め、産経新聞に切り替えた友人が、
先日発売された正論の巻頭コラムで、高山正之が良い記事を書いていると教えてくれた。
私が、戦後の世界で唯一無二の本物のジャーナリストであると評する彼の、面目躍如たる本物の論文である。
亡くなられた知の巨人、渡部昇一先生の追悼ミサが、
かつて教鞭を執られた上智大学構内の聖イグナチオ教会で執り行われた。
周囲の人々も同じ思いなのだろう。
とめどないざわめきの中で、それぞれがそれぞれに故人との思い出を手繰っているように見えた。
私の記憶は四半世紀前に遡る。
まだ新聞記者だった頃、この教会から程近い文化放送で、
竹村健一氏の番組にて、渡部先生と佐々淳行さんにお会いした。
三人とも昭和五年生まれで、
昭和最初の午年という縁から、日下公人氏らと「初午会」を結成されていた。
私も午年である。
下足番でも良いからと入会を願い出たが、十二年早いと追い出された。
その折、先生とお話しして、心から頷いたのが「朝日新聞は悪い」だった。
追悼文集『知の湧水』にも記されている。
渡部先生は、血友病に関する随筆を書いた。
この病は母親の二つあるX染色体の一方に因子があり、それを受け継いだ男児のみが発症する劣性遺伝である。
中学の理科で学ぶ内容だ。
だが朝日は理解しなかった。
社会部記者の原賀肇が自宅に押しかけ、
翌日、朝日の社会面には「劣悪遺伝子の子、生むな」「まるでヒトラー」という大見出しの架空対談が踊った。
渡部昇一は、ヒトラーと同列の非人間に仕立て上げられた。
どんな嘘でも、新聞が書けば真実に見える。
この手法は他の事件でも繰り返され、
教授を自殺に追い込み、
高速増殖炉「もんじゅ」でも、
朝日の糾弾によって責任者は命を絶った。
それでも朝日の記者たちは恥じることなく生き続けている。
そこまで思いを巡らせたところで、献花の順番が来た。
キリスト教の式ではあったが、私は和風に合掌した。

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