沖縄の米軍が弱体化したとき、最も得をするのは誰か
沖縄の在日米軍基地反対運動の背後で誰が利益を得るのか。日米同盟の抑止力低下が意味するものを、中国の対沖縄工作という視点から明らかにする。
2017-07-18
日米同盟はこのところ全体として一段と堅固になりながらも、なお沖縄での在日米軍基地への反対運動は複雑な振動を広げている。
まるで強壮な人間のノドに刺さったトゲのように、全身の機能こそ低下させないまでも、中枢部につながる神経を悩ませ、痛みをさらに拡大させかねない危険な兆候をみせているといえよう。
沖縄の米軍基地の基盤が揺らげば揺らぐほど、日米同盟の平時有事の効用が減る。
日本への侵略や攻撃を未然に抑えるための抑止力が減ることになるからだ。
また朝鮮半島や台湾海峡という東アジアの不安定地域への米軍の出動能力を落とし、中国に対する力の均衡を崩すことにもつながるわけである。
沖縄あるいは日本全体を拠点とするアメリカの軍事力が弱くなることを最も歓迎するのは誰か。
いまや東アジア、西太平洋の全域でアメリカの軍事的な存在を後退させようとする中国が米軍弱体化の最大の受益者であることは明白である。
中国がそのためにソフト、ハード両面での多様な措置をとっていることはすでに歴然としているが、これまで沖縄での反米軍基地運動への中国の関与は提起されることはまずなかった。
しかも中国の対沖縄工作の最終目的は日米同盟分断だというのだ。
「沖縄と中国」というこの重大な結びつきを新たに提起したのはアメリカ議会に設置された米中経済安保調査委員会という機関である。
この委員会は2000年に新たな法律により、米中両国間の経済と貿易の関係がアメリカの国家安全保障にどう影響するかを調査して、議会と政府に政策上の勧告をすることを目的に常設された。
議会の上下両院の有力議員たちが選ぶ十二人の委員が主体となり、米中関係を背景に中国側の軍事や外交の実態を調査するわけだ。
各委員は中国の軍事、経済、外交などに詳しい専門家のほか、諜報活動や安保政策の研究者、実務家が主になる。
最近まで政府や軍の枢要部に就いていた前官僚や前軍人、さらには上下両院で長年、活躍してきた前議員たちも委員を務める。
そしてそのときそのときの実際の中国の動き、米中関係の変動に合わせて、テーマをしぼり、さらなる専門家を証人として招いて、公聴会を開くのである。
同委員会は毎年、その活動成果をまとめて、年次報告書を発表する。
その内容は詳細かつ膨大となる。
最終的にはアメリカの政府と議会に対中政策に関する提言をするわけだ。
同委員会の事務局も中国や軍事、諜報に関する知識の豊富なスタッフで固められ、特定テーマについての報告書を委員たちとの共同作業で定期的に発表している。
アメリカの中国研究はこのように国政レベルできわめて広範かつ具体的なアプローチが多いのである。
中国の多様な動向のなかでもアメリカ側が最も真剣な注意を向けるのはやはり軍事動向だといえる。
この米中経済安保委員会はまさに中国の軍事動向と経済動向の関連を継続的に調べているのである。
そんな委員会が沖縄と中国のからみに関しての調査結果をこのほど明らかにしたのは「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」と題する報告書の中だった。
この稿続く。