慰安婦問題の病理はすでに始まっていた――「中国の旅」に見る原点

慰安婦報道で批判された朝日の姿勢は、すでに「中国の旅」連載時に確立されていた。疑問や反証を無視し、日本側取材を欠いた体質こそが、後の虚偽拡大を生んだ。

2016-05-04
以下は前章の続きである。
韓国・済州島で女性狩りをしたという吉田清治の虚偽証言の関連記事をはじめとする慰安婦報道では、こうした朝日の姿勢が厳しく批判された。
数々の疑問や反証から耳目をそらし、長年非を認めずに虚偽を広め続けたからだ。
吉田の虚偽証言について、いまでは政府さえも「朝日新聞社により事実であるかのように大きく報道され、日本と韓国の世論のみならず国際社会にも大きな影響を与えた」との見解を示すようになった。
本多と同世代の元朝日新聞記者でジャーナリストの長谷川煕はこう慨嘆する。
「批判や反論を踏まえず、日本側関係者の取材もしないのは新聞ではない。
単なるアジビラだ。
慰安婦問題での病理は、前段階として『中国の旅』の連載時にすでにあった」。
昭和46年10月6日付の朝日夕刊に掲載された『中国の旅』第2部「万人坑」の初回記事。
本多は第1部の連載に非難や疑問が寄せられたことを紹介した上で、「代表的な疑問に、まず答えたいと思います。
まず、『今さら、あんなことを掘りかえすなんて』という場合の『今さら』について」と切り出した。
「『今さら』と、この問題にふれまいとする態度は、日本を見つめるアジア諸国に、不信と警戒の色をますます強めさせるだけでなく、『今さら』と考えること自身がみずからの目をおおって、今こそやるべき問題をやらずに逃げていることの現れかもしれません」。
今回、40年以上前の連載に対する産経新聞の問題提起に、本多や朝日はあるいは「今さら」と思ったかもしれない。
だが、『中国の旅』によってゆがめられた歴史の再検証は、朝日が慰安婦問題をめぐる過去の虚偽報道をようやく認めた「今こそやるべき問題」ではないか。
(敬称略)

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