なぜ英国は米国を無視してAIIBに参加したのか――パナマ文書が暴いた地下の論理
パナマ文書が示した英国シティーと中国の「アングラな関係」を手がかりに、英国が米国の意向を無視してAIIBにいち早く参加した背景を検証する。
2016-05-04
以下は今月号の月刊誌サピオの44ページからである。
どうやらパナマ文書は、とんでもないパンドラの箱を開けてしまったようだ。
新聞などでは租税回避を目論んでいた個人名や企業名ばかりに注目が集まっているが、今回の情報流出は、国際金融センターである英ロンドンのシティーを直撃し、世界の金融を揺るがしかねない大問題なのだ。
ICIJが入手したデータをもとに、パナマの法律事務所モサック・フォンセカが1977年から2015年の間に設立を代行したオフショア企業を集計すると、英領バージン諸島が約11万4000社で全体の53%を占め、突出して多いことが分かった。
世界のアングラマネーは、そうしたタックスヘブンを経由してシティーに流れ込んでくる。
英国当局は、そうしたアングラマネーについて、まったく見て見ぬふりなのだ。
タックスヘブンに本拠を置く企業のうち約31万社が、合計26兆円もの資金を英国の不動産に投資している。
その半分近くがチャイナマネーである。
中国国内のアングラマネーは、タックスヘブンを経由することで匿名性を確保し、大手を振って英国に流れ込んでくる。
アングラマネーには、犯罪収益金と脱税目的の資金という二つのタイプがある。
タックスヘブンを使えば、税務処理さえ適切なら資金提供者の匿名性が確保される。
その資金で英国国内の不動産取引を行い、納税義務を果たすことで、アングラマネーはホワイトマネーにロンダリングされる。
パナマ文書スキャンダルは、シティーが世界のマネーロンダリングネットワークの心臓であったことを明らかにした。
しかも英国は、国家ぐるみで、銀行が全面協力する形で関与していた可能性が高い。
その上、このスキャンダルは、英国と中国が水面下で密接に結びついていた事実も白日の下に晒した。
なぜ英国が、盟友関係にある米国の意向を無視して、中国が推進するAIIB構想に対して、西側先進国の中で真っ先に参加表明したのかが、ここから浮かび上がってくる。
シティーは、国際通貨化が進む人民元取引の中心的役割を狙い、中国当局に陰に陽に働きかけ、様々な便宜を図ってきたのである。
パナマ文書で、習近平国家主席の義理の兄弟名義の運用が明らかになったのも、当然だった。
シティーを震源とする金融スキャンダルは、今後ますます拡大するだろう。