「モルト・オブリガード(molto obrigado)」

リオ五輪閉会式で耳にした一言が、ローマ近郊アルバーノ湖での体験と重なって甦る。
言葉の意味、身体感覚としての記憶、異文化の温度をめぐる回想録。

2016-08-22
「モルト・オブリガード(molto obrigado)」
リオ五輪の閉会式を観ていた。
最後に登壇したバッハ会長が最初に言った言葉が、これだった。
「ああ、そうか、あの時、ローマのカステル・ガンドルフォ(Castel Gandolfo)のアルバーノ湖で命からがら泳いで陸に上がってきた私に対して、ローマ法王に対する表敬で、池の周囲にいた人たちの中の、おばさんが、私に言った言葉の意味が、今、分かった」
私は泳いだことを注意されたとばかり思っていたから、今でも、なぜ、ありがとう、と言われたのかは分からない。
大阪でも有数の酒豪だった私は、私がイタリアでは大変な大金を用意した、クラスメートにして親友の豪邸で、私も既に、とても親しい顔なじみだったローマの貴族達と、美味しいワインを何本か開けている時、水泳の話になって、それならば泳ぎに行こうと言う無茶な話になった。
私の人生で、大酒を飲んで泳いだのは、酒を飲んで泳いだのは、後にも先にもこの時が最初で最後だった。
万が一の事が起きないように、私はこれ以上ない注意を払って泳いだ。
湖に生息している藻にあたりながら泳いだのも初めてだった。
中学生の頃から、私は美しい泳ぎをすると言われていた。
そんなことを話しているうちに、ならば泳ぎに行こうとなって車で、アルバーノ湖に向かい、泳いだ次第だった。
早々に切り上げて陸に上がった時のことだったのである。
アルバーノ湖というのはスタンダールが愛人の頭文字を湖の底に沈めたということでも有名な、とても美しい景観を持った湖なのである。
この湖畔に在るイタリアンレストランのピザは皮が薄くてとても美味しく、ローマ市内からわざわざ車で食事に来る人も多い、家族経営の、とてもいいレストランなのである。
帰り際、レジで、北新地で有数の歌い手だった私は、イタリアが生んだ大スターである、フランクシナトラの、「夜のストレンジャー」を歌い、経営者から拍手喝さいを浴びたのだった。

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