客観性を捨てた取材記者――政治集会でアジテーションを行うという越線
報道の客観性を担保すべき取材記者が、反政権を掲げる政治集会で壇上に立ち、政権批判の演説を行った。
記者倫理とは何か、公正とは何かを根本から問い直す象徴的事例を検証する。
2017-08-02
以下は前章の続きである。
望月衣塑子記者の熱弁
象徴的なシーンから紹介しよう。
2017年6月21日、参院議員会館で「安倍やめろ!!‥緊急市民集会」という会合が開かれた。
主催したのは「森友告発プロジェクト」なる団体だ。
土砂降りのなか、共産党や社民党などの現職議員のほか三百人以上の市民が集まり、安倍政権打倒に気勢を上げた。
その集会に、東京新聞社会部の望月衣塑子記者が参加していた。
取材に来たなら分かるが、彼女はなんと壇上に上がり、マイクを握って十分にわたり、政権批判の熱弁をふるった。
その模様はYouTubeにアップされている。
彼女は森友学園や加計学園問題について触れたあと、最後にこう言った。
「森友学園、加計学園、そして詩織さんの話を聞くにつけ、権力の統治者である安倍さんや菅さんたちの権力に対する考え方とか感じ方、意識がかなり狂い始めているんじゃないのか。
文科省の官僚は今日も自○党の議員に責められて本当に苦しそうでした。
でも、そうさせているのは文科省の人たちではありません。
やっぱり官房であり、安倍さんの最側近といわれる萩生田官房副長官です。
みなさん、記者会見にも応じていません。
それをしっかりやるべきだ。
説明責任を果たしますって月曜日に大きな声で官邸で会見していました。
その義務をしっかり果たしてください、と先ほどまで何度も菅さんに言い続けていました」(拍手)
さらに彼女はこう続けた。
「やっぱりナンバー2の彼に言うことが、いま最大の政治に訴えることかなと。
他に言う人がいないなら、政権を敵に回すことにはなるんですけど、もう自分が出るしかない。
前川さん、詩織さんの思いを背負って、ほかのみなさんの期待を背負っていくつもりです」(拍手)。
記者倫理に反した行動
この会はタイトルが示すように、安倍政権打倒を目指す政治集会である。
望月記者はそこで演壇に上り、「安倍さんや菅さんは狂い始めている」などと演説した。
彼女にも思想信条の自由、政治活動の自由はある。
とはいえ、記者が政治集会で演説していいものだろうか。
とりわけ私が違和感を覚えたのは、「ナンバー2の彼に言うことが政治に訴えること」というくだりだ。
会見に出席できるのは記者の特権である。
それは報道を通じて国民に事実を伝える役割を負託されているからだ。
だが、会見での質問が自己の政治的アピールであるなら話は別だ。
それは明確に記者倫理に反する。
訴えたいことがあるなら、質問で言うのではなく記事で書くべきだ。
百歩譲って、彼女が論説委員であれば理解できなくもない。
論説委員は論評が仕事であり、政治的主張を含むこともある。
しかし彼女は現場の社会部記者だ。
客観性を保つべき取材記者が政治集会でアジテーション紛いの演説をする。
これは一線を越えている。
ちなみに東京新聞を発行する中日新聞社の社是は「真実、公正、進歩的」である。
この社是は新入社員全員が研修で叩き込まれる。
彼女にとって、公正さはいったいどこへ行ったのか。