東芝はなぜ追い込まれたのか――原子力赤字とTRON潰しの真相
2016年に放映されたNHKの東芝特集は粉飾決算のみを強調したが、真因は原子力部門とパソコン部門の巨額赤字にあった。
TRON OSを巡る日米摩擦、ビル・ゲイツと孫正義の役割、そしてWindows支配がもたらした日本電機産業の構造的損失を検証する。
2016-09-19
数日前にNHKが、東芝の特集番組を放映した。
この番組を観ていた私の読者は、ここでも私の論説の正しさを知ったはずである。
この特集番組は、粉飾決算に追い込まれた東芝の原因を、問わず語りで報道していたのである。
慧眼を持たない人たちには分からなかっただろうが。
東芝が追い込まれたのは、原子力部門とパソコン部門の大赤字に在ったのである。
パソコン部門が大赤字なのは、日本が世界に誇る電機メーカーすべてに共通した現象である。
その原因はすべて、Windowsが世界を制覇する以前の事件にある。
私はこの事実を、世界に初めて発信した人間であり、何度も言及してきた。
日本が生んだ天才の一人であり、慶應で学んだ坂村健は、パソコンを動かすソフトとして極めて優秀なTRONを発明した。
日本政府は、このTRONを搭載したパソコンを、日本中の小学校・中学校に配置し、教育することを決定した。
携帯電話、デジタルカメラ、カーナビゲーション。
日本が世界をリードする多くの製品を動かす基本ソフトがある。
それがTRONである。
世界で最も使われている基本ソフトの一つである。
昭和59年、TRONを考案したのは一人の日本人学者だった。
東京大学の坂村健である。
「基本ソフトは情報化社会の基盤であり、空気や水と同じだ」と考えた坂村は、TRONの仕様書を全世界のメーカーに無料で公開した。
内外140社が集まり、プロジェクトが結成された。
しかし平成元年、そこに超大国アメリカが立ちはだかった。
日本に対し、小中学校で使うパソコンの規格をTRONに決めるなと迫ってきたのである。
やがて世界市場を制したのはWindowsだった。
パソコンの心臓部を握られた日本メーカーの利益率は低下し、基本ソフトを持たない弱さを痛感させられた。
この時、孫正義が、ビル・ゲイツの先兵となり、文部省の役人たちを執拗に攻撃した事実も明白である。
彼が言い放った言葉は、「パソコンを動かすのにソフトは二つも要らない」だった。
今、Windows上で日夜行われているサイバー犯罪の惨状を思えば、その言がいかに戯けていたかは言うまでもない。
この稿続く。