イノヴェーション礼賛の虚偽――資本分配率の拡大がもたらす購買力の鈍磨
月刊誌『正論』10月号に掲載された西部邁の論考は、イノヴェーション礼賛の背後で進行する資本分配率の拡大と労働分配率の縮小を鋭く批判する。
所得格差の拡大、購買力の鈍磨、金融パニックへと至る構造を暴き、日本と世界が読むべき警告を発している。
2016-10-08
資本分配率の拡大(労働分配率の縮小)という所得格差が休みなく進行し国内の購買力が鈍磨する。
以下も月刊誌正論10月号の西部邁氏の連載論文からの抜粋である。
日本国民全員と世界中の人たちが読まなければならない論文である事は言うまでもない。
見出し以外の文中強調は私。
前文略
「マニフェスト政治」の狂気が広がるなか、その狂気の正体を暴露すべく保守政治を守ることなど不可能と諦念する
民主党が「社会格差の是正」を強調しているにもかかわらず、イノヴェーションを礼賛しているのにたいし、この老人、反感を持たずにおれなかった。
というのも一つに、技術のイノヴェーションを創造的破壊と呼んでひたすらに肯定せんとしたジョセフ・シュムペーターの徒、つまり「シュムペーターリアン」は、元祖のようには歴史的パースペクティヴを持たぬまま、イノヴェーションを呼号しつづけていたし、今もそうしている。
彼らは、イノヴェーションなるものが独占(および寡占)利潤の確保を動機として進められているにもかかわらず、新技術、新商品、新販路、新資源、新組織の出現を市場における自由競争の偉大な成果として褒め称えている。
そういう嘘を平気で吐くシユムペータリアンで、学界であれ官界であれ財界であれ、今も満ち充ちている。
二つに、イノヴェーションはおおむねキャピタル・ユージング(資本使用的)あるいはレーバー・セーヴイング(労働節約的)で、その結果、資本分配率の拡大(労働分配率の縮小)という所得格差が休みなく進行し国内の購買力が鈍磨する。
三つに、イノヴェーションに覆われる市場は、未来を(確率的予測が可能なリスクを超えた)クライシス(危機)へと連れ込むというのに、近過去なり現在なりの資本収益率を未来に(マイオピアつまり近視病者よろしく)エクストラポレート(外挿)するという虚偽の情報で、加えてその情報にもとづいてデリヴァティヴ(派生証券)なるものを作り出すというフロード(詐欺)をすら重ねて、株式市場を操っていた。
それは遅かれ早かれ金融パニック(とそれに伴う失業増大や定期雇用制の崩壊)をもたらさずにはいない。
そのことに気づこうとしない「偏差値の高い(民主党系の)政治家や学者や評論家やジャーナリスト」、それが老人には始末に負えない莫迦者たちとみえてならなかった。
この稿続く。