″ゴッドファーザー″の末路――一帯一路と太子党企業の崩壊兆候
一帯一路構想の行き詰まり、AIIBの想定外の独立性、太子党企業の利権構造、そして王健林率いる大連万達集団の失速。WiLL誌掲載対談を通じて、中国経済と習近平体制の危うさを鋭く分析する。
中国トップスリーに入る大富豪・王健林率いる大連万達集団も微妙な感じになっています。
2017-08-06。
以下は今月号のWiLLに3段組み15ページに渡って掲載された、現今、最高の中国に対する分析と批評であると言っても過言ではない対談特集の続きである。
″ゴッドファーザー″の末路。
福島。
中国は、採算度外視で、戦略的に必要とみればゴーサインを出してきた。
これが中国国内の異常な債務残高のふくらみの原因ですが、同じ感覚で一帯一路戦略を進めるつもりでいたようです。
要は国内でやってきたバブリーなプロジェクトを周辺地域に拡大することでバブルを継続させ、当面の経済成長を維持させたい。
国内の過剰生産した建設資材の供給先を創出し、失業者も吸収しようとした。
でも、AIIBはすでにムーディーズやフィッチからトリプルA格付けをいただくまでになってしまったわけだから。
いい加減な審査はできない。思惑が外れた(笑)。
矢板。
ほとんど仕事をしていませんね。
開店休業状態です。
福島。
嬉しいことは嬉しいんですよ。
国際金融機関のトップに中国人が就くというのが憧れでしたから。
でも、一帯一路の資金集めという目的では使いにくい金融機関になった。
矢板。
一帯一路で危ういのが、スリランカ南部にある町ハンバントタの港。
あれは貸しまくって作った。
結果、返せない。
そうなると差し押さえてしまう。
港の経営権を中国が持ってしまったんです。
民間の金融機関であれば、どうやって金になるか早く売ることを考えるけど、中国は軍艦をそこに出そうかという(笑)。
経済取引と違う目的にするから、安全保障上の問題が出てきます。
福島。
そうですね。一帯一路の計画自体、中国の覇権戦略の中で生まれた構想です。
海洋覇権が世界を制するという考えがあるけれど、もう一度陸路も押さえておこうというわけです。
海洋覇権国家として最強のアメリカがいますからね。
大陸国家としてはロシアがライバルですが、今のところ蜜月関係。
そして陸路で欧州と近づくことが、日米の海洋国家勢とのパワーバランスに対抗しやすい、という発想ですね。
ただ、陸はインフラ建設にお金もかかるし、線路も道路も、メンテナンスが広範囲に必要となる。
結局、一帯一路も海の方が進んでますね。
海のルートは「真珠の首飾り」戦略とも重なっていますから、進めやすいという点もある。
矢板。
面白いのは、国家プロジェクトをやっているのが太子党系の企業なんです。
結局大きな利権が絡んでいて、国家戦略としてやっていくうちに、特権階級の金儲けの方法になっている。
本来の目的から少しずつずれていっている。
福島。
習近平はその太子党企業が気に入らないから締め付けを強めています。
最近は鄧小平ファミリーの庇護下にあって盤石だといわれていた安邦保険集団のCEOの呉小暉が失脚しました。
中国トップスリーに入る大富豪・王健林率いる大連万達集団も微妙な感じになっています。
太子党企業、紅色企業からみれば、習近平政権は今までの経済秩序や仕組みの破壊者に見えるでしょうね。
矢板。
習近平が70年代アメリカにいた時に、好きな映画が『ゴッドファーザー』だったそうです。
はじめはかっこいいけど、最後みんな悲惨な末路を遂げる(笑)。
福島。
例えば鄧小平なら改革開放、それを江沢民、胡錦濤が受け継いで経済発展を目指していた。
みな目指す方向性がある程度一致して、ストーリーが見えていた。
ところが習近平には、中国をどう着地させようとしているのか見えない。
矢板。
習近平に理念はない。
自分がいばりたいだけのような気がします。
福島。
習近平が毛沢東、鄧小平に次ぐ三人目の強人政治家になるという人もいますが、そうなれば、理念なき最悪の独裁者になりかねない。
矢板。
毛沢東時代へ戻るのかと……。
我々はどうやって中国と付き合うのか考えなければいけませんね。