「新聞を疑え」― 外交敗北を覆い隠す日本の大手メディア
慰安婦問題が米国下院や米紙に波及した背景として河野談話の影響を示し、外交敗北が敗戦級の損失を招く現実を論じる。さらに、日本の大手メディアが友好記事で本質を隠す構造、日本人の交渉観の弱点、日下公人やチャーチルの指摘を通じて「交渉なき譲歩」の危険を描く。
「新聞を疑え」という言葉は肝に銘じておくべきかもしれない。
2016-10-31
以下は前章の続きである。
慰安婦問題はさらに広がり、中国や韓国の工作により、ほぼ無関係のアメリカの下院で 日本に謝罪と賠償を求める決議案すら出された。
同時にアメリカの新聞の一部は一面で 日本の慰安婦を性奴隷(Sex Slaves またはSexual Slavery)と書きたてた。
同盟国であるアメリカでも「日本政府が自分で認めた」という事実(河野談話)を根拠にしているのである。
河野談話を撤回するか、撤回しないまでも河野談話の不当性を論理的かつ証拠を揃えて 否定しておかなければ、今もそうであるように、今後もそれは続くだろう。
だが、一度出した談話はたとえ古くなっても政府としては踏襲するケースが多い。
河野談話ひとつをとってみてもわかるように、外交での敗北は、敗戦にも匹敵するのである。
外交は互いに自国の“未来”を賭けて行われる以上、どちらの国にとっても 感情論や甘えが許されない冷徹な駆け引きを行う「流血のない戦争」なのである。
しかし日本の大手メディアが外交を記事にすると、 「外交で敗北した場合に蒙る敗戦と同等の損失」を無視した 偽善と作為に満ちた「いわゆる隣国との友好記事」になることが多い。
そんな時、朝日新聞や北海道新聞、東京新聞などの左翼的メディアでは必ずと言っていいほど 「日本側が譲歩すべき」「過去の戦争の反省」「アジアの感情を真摯に受け止めよ」など、 「友好」や「親善」や「国際交流」などで味付けされた“前提のおかしい記事”が載る。
昔の産経新聞のCMコピーではないが、「新聞を疑え」という言葉は肝に銘じておくべきかもしれない。
さて、外交の中に含まれる「話し合い」だが、これも日本は上手くない。
軍事などの話にアレルギーがあるだけでなく、日本人は交渉ごとも苦手である。
本来、交渉ごとというのは、もし自国の要求が10であれば他所の国のように堂々と10~15くらいを最初に提示し、そこから交渉を開始するのが基本中の基本だ。
ちょうどアジア諸国や大阪などで買い物する時に、 商売人が値付けの交渉のために最初の値段を高く言うことがあるのと似ている。
だが、この最初の段階で、日本人の多くは「遠慮」や「気の小ささ」などで
10どころか5程度から交渉を開始してしまう。
当然、5から始まった交渉では、得られる妥結点はせいぜい2か3になってしまう。
日本人は感覚の上でも、つい「欲張りすぎてはならない」であるとか
「仲良く5対5で折衝するのが大人の態度」などと考え、さらには
「こちらが先に譲歩すれば相手も少しくらい譲るんじゃないか?」などと
甘いことを考えてしまいがちだ。
このような日本人同士でのみ通用する「日本流の交渉術」は
世界標準ではないのである。
国際研究奨学財団会長の日下公人が、著書『これからの10年』の中で
日本の外交の異常性について触れた部分がある。
要約すると、日本は外交の場で相手に無理な要求を吹っ掛けられても
我慢や譲歩などをして「相手に合わせることで合意に辿り付こう」と考えてしまうが、 そんなことをすれば相手の要求がエスカレートするだけで良い結果が得られないから、 始めから“我慢”ではなく“交渉を”しなさい、というような内容だ。
この本の中で、イギリスの首相チャーチルの著書『第二次大戦回顧録』が引用されている。
そのチャーチルが「日本人は外交や交渉ということを知らないらしい」と書いているという。
チャーチルも、外交の常道として、日本に対してまず最初に無理難題を吹っ掛けるところから外交交渉を始めたのだが、 なんと日本は反論もせずに、いきなりその最初の無理難題を笑顔で飲んでしまった。
外交交渉としては肩透かしである。
言い方を変えれば(イギリスにとっては)嬉しい誤算だったろう。
だが、イギリスの外交にあたる者としては、当然、祖国のメリットを“最大”にする義務がある。
チャーチルは日本にはまだまだ吹っ掛けられるだろうと考え、要求をエスカレートさせる。
だが、それでもまた、日本は相手の要求を笑顔で飲んでしまう。
日本が飲み続ける限り、イギリス側は無茶な要求を繰り返す。
イギリスの代表としては、まず、そうやって様子をみながら日本の限界値を探り、そこから交渉を始め、結果的にイギリス国民に最大の利益を持ち帰れるような双方納得の着地点を模索する算段だ。
だがイギリスの要求が繰り返されると、ある時、突然日本人の顔つきが変わる。
「イギリスは紳士の国だと思っていたが悪逆非道の国である。 もうこれ以上は我慢ならない。刺し違えて死ぬ」
少し前まで日本人は笑って要求を飲んでいたので、日本人が牙をむくのは イギリス人からみれば「突然」だ。
それは驚いたことだろう。
そして、チャーチルがこの回顧録を書いた昭和16年の12月、イギリスは、当時“世界最強”といわれた主力戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と
歴戦の浮沈艦「レパルス」の2隻を、日本海軍航空隊に撃沈されることになる。
この2隻はイギリスが世界に誇る戦艦であり、しかも当時の世界の常識では 「作戦行動中の戦艦を“航空機で”沈めることは不可能」とされていた。
また、チャーチルのお気に入りの戦艦でもあった。
彼は「まさか航空機を相手に」「まさかこの最強の2隻が」撃沈されることがあろうとは 微塵も思っていなかった。
同著の中でその時の気持ちを
「戦争の全期間を通じてこれ以上の衝撃を受けたことがなかった」と述べている。
本来なら「最強の戦艦2隻を撃沈させるほどの力を持つ国」は、
無闇に頭を下げたり愛想笑いする必要もないし、一方的に要求を飲み続ける必要などない。
この稿続く。
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