口先の非難では侵略は止まらない ― トランプ外交とリアリズムの復権
南シナ海で軍事基地建設という明白な侵略を進める中国に対し、オバマ政権は口先の非難に終始し、実効的な措置を取らなかった。
その結果、抑止力は崩れ、米軍関係者から「アメリカ封じ込め政策」と自嘲される事態を招いた。
江崎道朗の論考を通じ、トランプ陣営が掲げる「バランス・オブ・パワー外交」の正当性を検証する。
しかも南シナ海に軍事基地を作るなど「侵略」を堂々と進める中国に対しても、口先で非難するだけで
2016-12-09
以下は現在発売中の月刊誌「正論」1月号に掲載されている評論家Ezaki Michioの、「意外に正しいトランプの『暴論』」と題した論文からである。
文中強調は私。
前文略
●リアリズムへの回帰
マスコミの一部は、「トランプ新政権は孤立主義を採用し、アメリカのアジアへの関与を減らせば、アジア太平洋の安定は損なわれ、日本も危うい」などと不安を煽る報道をしている。
しかし、アメリカの対外政策を長年見てきた私からすれば、トランプ新政権はようやくまともな対外政策に戻ろうとしているに過ぎない。
一九八〇年代後半、レーガン共和党政権が対ソ強硬策を唱え、米ソの冷戦はソ連の敗北で終わった。
アメリカ国民はこれでようやく国内問題に専念できると考えていたのに、共和党の中に入り込んだネオコンサバティブという対外軍事介入派が、その後も中東を中心に軍事関与を続けた。
特に二〇〇一年の9・11テロ以降、「テロとの戦い」と称した対外軍事介入の連続に疲れたアメリカ国民は、八年前、「対外戦争でアメリカの兵士を殺さない」と主張した民主党のオバマ氏を支持した。
ところが、オバマ政権は急激な軍縮を実施するとともに、「もはやアメリカは世界の警察官ではない」と公言し、世界各地の平和と安定を維持する努力を怠るようになった。
紛争の危険を事前に察知するためのインテリジェンス活動の予算まで削減し、紛争抑止能力が急減するようになった。
しかも南シナ海に軍事基地を作るなど「侵略」を堂々と進める中国に対しても、口先で非難するだけで実効的な措置を取ろうとしなかった。
こうしたオバマ政権の安全保障政策を、米軍関係者は自嘲的に「アメリカ封じ込め政策」と呼んでいる。
ネオコンの「対外軍事干渉」も、オバマの「アメリカ封じ込め」も問題なのだ。
世界各地のバランス・オブ・パワーを維持しながら紛争を抑止するというリアリズムを、この二十年のアメリカは見失ってきた。
だからこそ、バランス・オブ・パワーの外交に戻そうというのがトランプ陣営の基本的な考え方なのである。
そうした文脈で次の記事を読めば、トランプ政権の安全保障政策が至極まっとうであることが分かるはずだ。
後略。