アメリカの対中分析の現実――国家レベルで進む精緻な中国研究

米中経済安保調査委員会の活動は、アメリカが中国を経済協力の相手であると同時に安全保障上の競合・脅威と捉えている現実を示す。議会主導で行われる対中分析は、軍事・経済・外交を統合した国家レベルの精緻な研究体制として、日本に重要な示唆を与える。

アメリカの中国研究は、このように国政レベルできわめて広範かつ具体的なアプローチが多いのである。
2018-01-17
以下は前章の続きである。
この組織の存在や目的自体が、アメリカ側の歴代政権に通じる冷徹な対中観を明示している。
米中経済安保調査委員会が新設されたのは二〇〇〇年、そのための特別な法律が制定されての結果だった。
この時期は民主党のビル・クリントン政権の最終年度、中国の軍事力の劇的な増強が国際的な警戒を生み始めていた。
とくにアメリカ側では東アジアでのそれまでの自国主導の安全保障体制に中国が正面から挑戦してくるようだ、という認識が強くなっていた。
トランプと中国
だが、その一方、アメリカにとって中国との協力も必要だった。
経済や金融という面での米中協調、あるいは国際テロ対策での米中連携などがその実例だった。
だから、その時代のアメリカにとって中国は敵対性を秘めた対立や競合の相手、同時に協力や協調の相手でもあった。
だが、米側にはその敵対性の領域、対立の部分にまず最大の注意を向けねばならないという現実的な姿勢が厳存していた。
この米中経済安保調査委員会の誕生が、その対中認識の現実性の帰結のようでもあった。
いまのトランプ政権でも中国を協調の相手とみながら、なお、敵対や競合の相手とみるという複眼的な構えは変わっていない。
さて、米中経済安保調査委員会の設立の目的は「米中両国間の経済と貿易の関係がアメリカの国家安全保障にどう影響するかを調査して、議会と政府に政策上の勧告をする」とされていた。
まさに米中両国間の協調部分の「経済と貿易の関係」が、対立領域の「国家安全保障」にどんな影響を及ぼすかを精査するという姿勢だった。
同委員会の構成は、議会の上下両院の超党派有力議員たちが選ぶ十二人の委員(コミッショナー)が主体となる。
各委員は中国の軍事、経済、外交などに詳しい専門家のほか、諜報活動や安保政策の研究者、実務家が主となる。
最近まで政府や軍の枢要部に就いていた前官僚や前軍人、さらには上下両院で長年、活躍してきた前議員たちも委員を務める。
そして、同委員会はそのとき、そのときの実際の中国の動き、米中関係の変動に合わせて、テーマをしぼり、独自の調査を進める。
同時に公聴会を開き、広範な各分野の専門家を証人として招いて、意見や報告を聞くのである。
米中経済安保調査委員会は毎年、その活動成果をまとめて、年次報告書を発表する。
その内容は詳細かつ膨大となる。
最終的には、アメリカの政府と議会に対中政策に関する提言をするわけだ。
同委員会の事務局も中国や軍事、諜報に関する知識の豊富なスタッフで固められ、特定テーマについての報告書を委員たちとの共同作業で定期的に発表している。
アメリカの中国研究は、このように国政レベルできわめて広範かつ具体的なアプローチが多いのである。
この稿続く。

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