岸井成格と「戦略型フレーム報道」。安保法制報道における詭弁とメディアの論理破綻。

『報道ステーション』メインキャスターを務めた岸井成格氏の報道姿勢を分析する。
安全保障関連法をめぐる議論で、政策の内容を論じる「争点型フレーム」ではなく、法案阻止を目的とした「戦略型フレーム」を展開したと指摘。
感情への訴え、権威への訴え、藁人形論法などの詭弁を例に、日本のテレビ報道の論理破綻を批判する論考である。

2019-02-01
そんななかで岸井氏は、法制度の内容を議論する【争点型フレームissue frame】の報道をほとんどすることなく、ありとあらゆる詭弁を駆使して。
以下は前章の続きである。
あらゆる詭弁を駆使。
現在、『報道ステーション』のコメンテーターを務めている後藤謙次氏が筑紫哲也氏の後任を短く務めたあと、メインキャスターに抜擢されたのが、毎日新聞社特別編集委員の岸井成格氏でした。
岸井氏の在任期間においては、特定秘密保護法および平和安全法制といった日本の安全保障にかかわる法制度の制定が、国会の重要な争点となっていました。
そんななかで岸井氏は、法制度の内容を議論する【争点型フレームissue frame】の報道をほとんどすることなく、ありとあらゆる詭弁を駆使して法制度の成立を阻止する【戦略型フレームstrategic frame】の報道を展開したのです。
以下、例を挙げながら、詭弁の方法論を紹介していきます。
岸井氏は、2014年の衆院選前に番組出演した安倍首相に「安保法制は政権公約である」ことを明確に確認したうえで、「政権を取った政党は政権公約を断行しなければならない」と番組で宣言しました。
このとき岸井氏は、安保法制を政権公約とすれば自民党は選挙に敗北すると考えていたものと推察されます。
ところが、衆院選では安保法制を政権公約とする自民党と公明党が大勝利を収めました。
その後、政権をとった自民党と公明党は、岸井氏の指示どおりに法案を可決する形で政権公約を断行しました。
すると法案可決後に岸井氏から出た言葉は、「憲法と国民を軽視した数による暴挙」「権力の暴走」「これだけの民意を無視しての強行採決はとても考えられない」「戦後の平和主義と民主主義が本当に危機に瀕している」「日本の民主主義の将来は暗い」「日本の土台を破壊する」といったものでした。
岸井氏のこれらの発言は、明らかに論理を逸脱した【形式的誤謬formal fallacy】であると言えます。
根拠もなしに「~としか思えない」と主張する【主観に訴える論証appeal to subjectivity】や、全知全能の神のように「首相は~しようと考えている」といった【立証不能論証unprovable argument】を連発して「戦後憲政史上の汚点と言わざるを得ない」という結論を導く論理構造の欠如も極めて杜撰でした。
そもそも岸井氏は、審議中の安保法案に対して、番組を使って反対運動を繰り広げました。
反対デモを美化する【感情に訴える論証appeal to emotion】、法案賛成者の人格を攻撃する【人格に訴える論証ad hominem】、学者・著名人の反対を無批判に利用する【権威に訴える論証appeal to irrelevant authority】などの【論点相違irrelevance】。
「安保法制によって歯止めが外されて、いつでもどこへでも自衛隊が武力を行使できるようになる」という偽説を流布した【論点歪曲the straw man】。
「議論が拙速である」「法案を理解できない」「首相のたとえ話がよくない」「自民党は法案審議よりも総裁選を優先すべきである」などの法案とは無関係な言説を悪用した【論点回避red herring】。
これらはいずれも深刻な演繹原理不全です。
一方、集団的自衛権の発動や集団安全保障参加の要件である各種事態の説明において、必要条件の一部のみを提示し、それがあたかも十分条件であるかのような錯覚を視聴者に与えて結論を導く【十分条件と必要条件の混同confusion of sufficient and necessary causes】を犯しました。
これは深刻な帰納原理不全です。
また岸井氏は、デモ参加人数や報道機関の世論調査という「曖昧な民意」を根拠として、「これだけの国民の声」「政府与党は民意を無視している」と数の論理を展開しました。
これは、ミクロな特定集団の民意をマクロな日本国民の民意と混同する【合成の誤謬fallacy of composition】です。
岸井氏には、物事の概念に対する見識が不足していたのです。
そして最も深刻なのが、政治的主張と倫理的評価がテレビのニュースキャスターの発言として不適切であるということを全く認識していなかったことです。
「閣議決定の撤回を是非お願いしたい」「これ(特定秘密保護法)だけは絶対撤回すべき法律だ」「この法案は廃案にするか、政府与党が潔く撤回をすべき」「メディアとしても廃案に向けて声を上げ続けるべきだ」といった個人の【義務論deontology】をテレビで主張することは、選民思想を持ったマスメディアの驕りに他なりません。
この稿続く。

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