シラクの猫騙し――朝日新聞の白人崇拝とフランスの隠された罪
2019年11月7日発信。週刊新潮に掲載された高山正之氏の論文「シラクの猫騙し」から。ジャック・シラク元仏大統領の謝罪演説をめぐり、ナチス占領下のフランスによるユダヤ人迫害協力、ホロコースト関連資産問題、核実験、公金横領疑惑、そして朝日新聞の白人崇拝的報道姿勢を批判する。
2019-11-07
朝日は白人崇拝が社是だからそんな話は出てこない。
「鬼畜米英」を懐かしく思い出させるコラムだった。
以下は本日発売された週刊新潮の掉尾を飾る、シラクの猫騙し、と題して掲載された高山正之の論文からである。
この論文も、彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが読まなければならない論文である。
フランスの元大統領ジヤック・シラクが死んだ。
白人を崇拝する朝日新聞はシラクを持ち上げた亡者記事を載せ、コラム「日曜に想う」でも取り上げていた。
執筆は大野博人。
1940年5月、独軍がアルデンヌの森から侵攻し、守っていた肌の黒い植民地兵が敗れるとフランスはあっさり降伏した。
彼らは抵抗もせず終戦まで遊んで暮らした。
ナチスにも迎合し、ヒムラーから在仏のユダヤ人狩りを命じられると嬉々として従った。
彼らは今のシヤルル・ドゴール空港近くのドランシーにユダヤ人を入れる仮設収容所をつくり、鉄道の引き込み線まで敷いた。
そこから列車に乗ればアウシュビッツの強制収容所まで直通で行けた。
準備が整うと在留ユダヤ人を文字通り狩り出してドランシーに送り込んだ。
ユダヤ人の住居や経営する企業は売却させ、代金はクレディ・リヨネ銀行などに預金させた。
ドランシーに入れられたのは7万5721人。
アウシュビッツ行きの列車に乗せるときは身体検査し、衣服に縫い込んだ宝石や金貨を押収した。
ユダヤ人が、我が子だけでも助けようとナチスへの命乞い用に隠し持っていたものだ。
フランス人の無慈悲で強欲な所業は戦後も続く。
ユダヤ人が帰ってこないのを確認すると、クレディ・リヨネは持ち主不明を口実に預託財産を懐にした。
ドランシーで押収した金品も頂戴して口をつぐんだ。
代わりに「占領下で我々はみなレジスタンスになって抵抗した」とか、李承晩みたいな嘘を並べ、世間を欺いてきた。
それから半世紀。
大統領に就任したシラクが「私たちは守るべき人たちを処刑人に引き渡した」と隠し続けてきた秘密を告白した。
「難民や亡命者を匿うはずのフランスは取り返しのつかない過ちをした」と、犠牲者に謝罪した。
大野のコラムは以上の顛末を語って「シラクの言葉は今も人の心に迫り、訴える」と結んでいる。
白人は過ちに目をつぶらない、素晴らしいではないかと称賛する。
ただ、少し気になるのはこのシラク発言が恰(あたか)も青天の霹靂のごとく語られたように読めることだ。
それは違う。
あのころホロコーストの犠牲者は声を上げていた。
声を上げすぎ「ホロコースト産業」なんて自戒の書も出たほどだ。
まず槍玉に挙がったのはスイス銀行だった。
収容所で消えたユダヤ人資産を銀行が勝手に懐にした、と。
ついでにスイス政府もナチスから逃げてきたユダヤ人3万人を国境で追い返した旧悪を暴露されていた。
フランスの悪行もとっくにバレていた。
むしろナチスに協力してホロコーストを手伝った点でスイスより悪質だった。
だから彼は先手を打って「占領者の犯罪的狂気を補佐した」ことも詫びの言葉に入れた。
贖罪のための基金も早々に準備した。
正直な感想を言えば、うまく立ち回ったというところだろう。
それに大野は言及しなかったが、シラクがもう一つ、先手を打ったものがある。
核実験だ。
彼はこの謝罪演説の裏で、実は毎月1発ずつ南太平洋のムルロア環礁で核実験を繰り返していた。
なぜなら、その翌年9月に核実験禁止条約が採択されるからだ。
駆け込み実験といっていい。
核を持たなきゃあ大国じゃない。
支那や北朝鮮と同レベルの発想しかしない大統領だった。
でも彼は大相撲をこよなく愛した人だった。
国技館に何度も来てくれ、確か「パリ場所」もあった。
素直な日本人は額面通り受け取りそうだが、シラクが引退してまず暴かれたのが公金横領。
それも東京相和銀行をその不正蓄財に使っていたという。
しばしばの訪日も大相撲はついでで、不正蓄財のためだったと聞くと少々興も冷めてくる。
朝日は白人崇拝が社是だからそんな話は出てこない。
「鬼畜米英」を懐かしく思い出させるコラムだった。