みなとみらいの光と夜景|リスト《ドン・ジョバンニの回想》|五十嵐薫子 2014 PTNA特級セミファイナル

横浜みなとみらいの夜景を中心に構成した写真集を、五十嵐薫子が2014年PTNA特級セミファイナルで演奏したリスト《ドン・ジョバンニの回想》17分28秒に合わせた作品である。
音楽は、2014年PTNA特級セミファイナルで五十嵐薫子が演奏したリスト《ドン・ジョバンニの回想》。
演奏時間は17分28秒である。
リスト《ドン・ジョバンニの回想》は、正式には《モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」の回想》とも呼ばれる、リストのピアノ作品の中でも屈指の難曲である。
原曲は、モーツァルトの歌劇《ドン・ジョバンニ》。
リストはこのオペラの中から、特に印象的な旋律を取り出し、それを単なる編曲ではなく、巨大なピアノの劇場作品へと変貌させた。
この曲の中心にあるのは、ドン・ジョバンニという人物の魔性である。
彼は誘惑者であり、貴族であり、反逆者であり、破滅へ向かって進む男である。
そのため、この作品には、優美さ、官能性、皮肉、恐怖、華麗さ、そして破滅の影が同時に存在している。
冒頭から、ただ美しいだけの音楽ではない。
どこか暗い気配がある。
やがて、音楽は甘美な旋律へ移っていく。
しかし、それは決して純粋な抒情ではない。
美しさの奥に、危険な魅力が潜んでいる。
中間部から後半にかけて、リストはモーツァルトの旋律をもとに、ピアノ技巧を極限まで拡大していく。
華麗なパッセージ。
跳躍。
重音。
オクターブ。
急速な音型。
左右の手が交錯するような劇的な展開。
それらは、単なる技巧の誇示ではない。
ドン・ジョバンニという人物そのものの、奔放さと破滅への疾走を表している。
この作品の凄さは、モーツァルトの透明な歌劇世界を、リストがロマン派の巨大な情念と劇場性によって再創造した点にある。
ピアノ一台の中に、誘惑、舞踏、恐怖、審判、破滅の劇場が立ち上がる。
だから《ドン・ジョバンニの回想》は、単なる超絶技巧曲ではない。
ピアノによるオペラである。
ピアノによる劇場である。
ピアノによる人間の業の描写である。
横浜の港、光、水面、建築、夜景。
それらは、この曲が持つ華やぎ、妖しさ、劇場性と深く響き合っている。
五十嵐薫子の若き日の演奏は、単なる技巧を超えて、リストが作り上げた巨大な音楽劇場に真正面から挑んでいる。
その17分28秒に、みなとみらいの光と夜景を重ねた。


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