5月10日のバッハ|京都府立植物園の薔薇|ポリーニ、グレン・グールド《平均律クラヴィーア曲集》

2026年5月10日。
快晴。
雲一つない朝だった。
この日、私は大阪から京都まで新幹線を使用し、開園一番乗りで京都府立植物園に入った。
まさに、薔薇が咲き出した第一歩のような日だった。
第一部には、マウリツィオ・ポリーニによるバッハ《平均律クラヴィーア曲集》第1巻から、第1番プレリュード、第1番フーガ、第2番プレリュードを使用した。
ポリーニのバッハは、本当に素晴らしい。
透明で、端正で、澄み切った朝の光そのもののようである。
園に入ってすぐの場所には、花で作られた見事な熊のプーさんが置かれていた。
その一枚を導入として置き、そこから、快晴の京都府立植物園の薔薇へ入っていく。
5月10日の薔薇は、満開ではなかった。
しかし、そのことがかえって、この日の写真に特別な力を与えている。
咲き出したばかりの緊張感。
これから開いていく生命の気配。
雲一つない快晴の光。
この日の写真は、伊達に快晴ではなかった。
なかなか、いや、実にいい写真集だった。
私は当初、少し急いで撮り過ぎたかという気持ちがあり、この写真の良さを見失っていた。
そのため、画面に映り込んだ人も消去せずにいた。
今回、それらをすべて消去し、厳選して140数枚にまとめた。
第二部には、グレン・グールドによるバッハ《平均律クラヴィーア曲集》を使用した。
グールドのバッハは、これまでに何度も私の写真作品で使用して来た。
しかし、ポリーニのバッハと続けて聴くことで、同じバッハでありながら、まったく異なる光と時間が現れる。
ポリーニの清澄。
グールドの粒立つ音。
この二つのバッハが、5月10日の京都府立植物園の薔薇に、ぴったりと重なった。
当初は、この後にショパン《英雄ポロネーズ》を続けることも考えていた。
しかし、5月10日の写真140数枚は、ポリーニとグレン・グールドのバッハだけで、完全に一つの作品になった。
だから、本作品は、あえてポロネーズを切り離し、「5月10日のバッハ」として完成させることにした。
満開へ向かう前の薔薇。
快晴の朝。
開園一番乗り。
そして、ポリーニとグレン・グールドのバッハ。
これは、2026年5月10日、京都府立植物園でしか生まれなかった作品である。

写真:京都府立植物園
撮影日:2026年5月10日
音楽:
J.S. Bach: The Well-Tempered Clavier, Book I
No.1 Prelude
No.1 Fugue
No.2 Prelude
Maurizio Pollini
J.S. Bach: The Well-Tempered Clavier, Book I
Glenn Gould

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