プラハ市長が語った中国不信――「一つの中国」条項、台湾、そして変わったチェコ国民の中国観

2020年1月24日発信。前章に続き、産経新聞の三井美奈記者によるプラハ市長ズデニェク・フジブ氏への詳報を紹介する。北京との姉妹都市協定に含まれた「一つの中国」条項、プラハ交響楽団中国ツアー中止、台北との協定締結、中国投資の不履行、臓器狩り疑惑、チベット問題などを通じて、チェコ国民の対中観が変化したことを伝える。

2020-01-24
ゼマン大統領は中国投資を宣伝してきたが、中国側はプロのサッカーチームを買収しても、雇用は創出しなかった。
大統領顧問になった中国企業の会長は失踪した。
以下は前章の続きである。
「一つの中国」条項削除を無視 プラハ市長 発言詳報
チェコの首都プラハのズデニェク・フジブ市長による発言は以下の通り。
―北京と姉妹都市協定を解消した理由は
私の前任市長が犯した間違いを正すためだ。
協定は2016年に結ばれた。
「一つの中国」原則順守が第3条に明記されており、私は野党メンバーとして批判した。
18年の地方選で野党は与党になり、19年1月、市長として北京に申し入れをした。
市議会が「協定の再交渉」を求める決議をしたからだ。
ロンドンなど北京が他都市と結んだ協定に、こんな条項はない。
北京は電子メールや書簡の問い合わせに返事もしなくなり、プラハ交響楽団の中国ツアーを一方的に中止した。
子供じみた、いじめだ。
私は市議会の承認を得て、協定解消を決めた。
北京市も解消した。
姉妹都市関係に必要なのは、①政治と切り離す②相互に敬意を払う③相互のためになるーの3条件。
北京はいずれも満たしていない。
「一つの中国」は国の外交の話。
われわれの問い合わせを無視し、相互尊重原則も守らなかった。
話し合いもできないパートナー関係に意味はない。
―チェコ政府の対応は
外務省に相談すると、「姉妹都市は市政が決めること」という返答で、介入しなかった。
ゼマン大統領は中国投資を宣伝してきたが、中国側はプロのサッカーチームを買収しても、雇用は創出しなかった。
大統領顧問になった中国企業の会長は失踪した。
中国は信頼できるパートナーではない。
パンダ貸与の約束も守られなかった。
―なぜ台北と姉妹都市協定を結んだのか
台北とはIT市政などの技術で協力する。
人口規模も近く、住宅、環境など重視する政策も同じ。
台湾で今月行われた民主選挙は、われわれと共有する価値観を示した。
私は05年、台湾に放射線医療の研修で2ヵ月滞在した。
昨年3月には台北を国際会合で訪れ、蔡英文総統や閣僚に会った。
プラハー台北の直行便就航の提案を話し合った。
―中国側の報復は
上海はプラハとの友好都市関係を解消した。
広州市とも関係を結んでいるが、何も言ってこない。
上海、広州との協定には「一つの中国」原則の記載はない。
プラハの観光客は年間800万人のうち中国からは約62万人。
プラハは現在、観光客の増えすぎが問題になっており、減ることは治安や衛生面でよいかもしれない。
観光税は市の収入にならず、関係ない。
-チェコで中台対立は
昨年舂、チェコ政府の経済会合に台湾代表が招かれた。
駐プラハ中国大使が「退場させろ」と抗議し、政府はやむなく従った。
プラハ市恒例の外交団との懇親会でも、中国大使は同じ抗議をしたが、私が「私の客です」と応じると、彼は退席した。
―中国をどう見るか
私は医師として、中国の「臓器狩り」疑惑を許せない。
チェコ国会や欧州連合(EU)の欧州議会でも、懸念が示されている。
チェコでは、自治体がチベット旗を掲揚する伝統がある。
チベットの文化、自決権への要求を支持するためだ。
民主化の指導者だったハベル元大統領とダライ・ラマは深い友情で結ばれ、後継者は伝統を引き継いだ。
チェコもハプスブルク帝国以来、自決権を求めてきたから、思いは強い。
―チェコ国民の反応は
ゼマン大統領の対中接近にもかかわらず、中国投資の約束は実現されず、国民の中国観は変わった。
18年、チェコ情報当局が中国のサイバー攻撃によるスパイ活動に警告を鳴らしたこともある。
(聞き手 三井美奈)

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