国際社会における日本の宣伝下手――ゴーン逃亡、慰安婦問題、情報戦の現実
2020年1月24日発信。産経新聞「正論」に掲載された精神科医・和田秀樹氏の論考を紹介し、カルロス・ゴーン被告逃亡後の日本政府の事後対応、慰安婦問題における国際発信の不足、韓国や中国によるプロパガンダ活動、そして情報戦・宣伝戦の現実を論じる。日本が正しさだけでなく、国際社会にどう伝えるかを重視すべきだと説く。
2020-01-24
国際社会における日本の宣伝下手
ゴーン被告逃亡の事後対応
慰安婦問題でも世界に嘘が
情報戦の現実から目背けず
以下は昨日の産経新聞の「正論」からである。
国際社会における日本の宣伝下手
精神科医 和田 秀樹
ゴーン被告逃亡の事後対応
日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告の保釈中の国外逃亡は、日本の犯罪史上にも残るくらいの衝撃的な出来事だった。
事のセンセーショナル性やスケール以上に、私が興味を引いたのは事後の対応だ。
すぐさま、自分の選んだメディアの人間だけを呼んで、記者会見を開いた。
そこでは、自分の罪に根拠がないことや日産と検察が共謀して陥れたと主張するが、この証拠は全く示されなかった。
そして、日本の取り調べのひどさを一方的に主張した。
日本人からすると笑止千万の話であるが、ユーチューブなどへの書き込みを見る限り、海外の人からは日本の司法制度への批判が強かった。
これに対して、日本の森雅子法相は早速記者会見を開き、日本の取り調べの正確性や人権への配慮を説明し、海外メディアにもその説明を行った。
ここまでは評価できるのだが、「ゴーン氏が裁判で無罪を証明すべきだ」という失言をしてしまった。
推定無罪の原則では有罪を検察が証明しないといけないのであるから、外国人の常識には反する。
これまでの説明を台無しにすると言っていいものだ。
残念ながら日本と欧米とでは司法制度は違う。
欧米では証拠が不十分でも裁判で決着をつけようというのが通例で、日本は十分な証拠がない限り起訴しない代わりに、起訴した場合は99%有罪というやり方だ。
日本の治安のよさなどを強調しこちらの制度が悪いものではないことを強調したほうが、外国人には納得が得られたかもしれない。
それ以上に、ゴーン被告の逃亡や犯罪を許すと、治安が成り立たなくなることのほか、金持ちの犯罪が許されることになるという今の貧富の差への怒りに訴えかけるほうが、外国の人の共感が得られただろう。
私が何が言いたいかというと、日本人が正しいか正しくないかにこだわる割には、海外の人にどう思われるか、配慮が足りない、宣伝が下手だということだ。
慰安婦問題でも世界に嘘が
保守論陣の寄稿を見ても、よく調べているし、説得力かある。
だが外国の人に知ってもらえないと意味がないように思える。
たとえば慰安婦問題にしても、海外の人への宣伝が足りない。
朝日新聞が、慰安婦を強制連行したという吉田清治証言などの誤りを認め、関連記事を取り消しても、それをほとんど海外に知らせる努力をしてこなかった。
だから、それ以降も慰安婦を「性奴隷」などとする嘘が正されず、慰安婦像が海外で建てられるようなことが続いている。
米サンフランシスコ市のような海外の都市で慰安婦像が設置され、「慰安婦の日」まで制定されたのは、韓国や反日連携する中国側のプロパガンダ活動が成功しているからだ。
多くのチラシを撒き、新聞で1面意見広告を打つなどの活動を続けることで、一般市民に慰安婦について事実を捻じ曲げ、自分たちの信じさせたいことを信じさせている。
しかし、日本は事実を発信する努力を怠っているため、たとえ、こちらのほうが史実に基づく真実であったとしてもそれを信じる人は少ない。
残念ながら、強制はなく、売春であったとしても、現在の国際スタングートでは理解は得られないだろう。
しかしながら、当時の日本軍がほとんどレイプをしなかったことなど、事実を積み重ね、訴えることはできるかもしれない。
韓国にこれ以上言わせないために、彼らのベトナム戦争の時に行った女性に対する非道を広め、「お互いに過去を反省しよう」ということも可能だろう。
情報戦の現実から目背けず
日本は、昔から海外に理解してもらう意味で「宣伝」が下手なわけではなかった。
先の大戦で東南アジアで英仏からの解放を訴え、今でも親日国が少なくない。
戦後、情報戰や宣伝戦というと悪印象で捉え腰が引けていないか。
当時の日本の情報機関は、情報を取るだけでなく、情報操作を行ったという点で先進的だった。
満州国では、甘粕正彦が理事長についた満州映画協会が娯楽性にも優れた映画を作り、李香蘭をスターにして、満州の人たちを親日的にしていった。
ところが、戦後はその伝統が引き継がれず、逆に日本の情報機関出身と思われる朝鮮半島の人たちのプロパガンダを長きにわたり、信じるようになってしまった。
韓国は映画で自国の宣伝をするために多額の補助金を出している。
その予算は400億円とされる。
本年度、韓国映画はアカデミー賞の国際映画賞(旧外国語映画賞)だけでなく6部門でノミネートされている。
日本の映画の直接の助成金は約4億円にすぎない。
人間にとって真実とは、自分が信じる現実であり、主観的なものである。
宣伝に力を入れず、金をかけないと国際社会では優位に立てない現実を心すべきだ。
(わだ ひでき)