ゴーン逃亡の深層――暴露寸前だった黒い資金操作と国際金融犯罪

2020年1月25日発信。月刊誌WiLL掲載の田中秀臣氏と元山口組組長・猫組長による対談を紹介し、カルロス・ゴーン被告の国外逃亡、特別背任罪、マネーロンダリング、国際指名手配、レバノン逃亡の背景を論じる。逃亡直前に開示された決定的証拠や、家族ぐるみの資金管理疑惑、新生銀行との取引などから、ゴーン事件の黒い深層を読み解く。

2020-01-25
問題は特別背任罪のほうです。
逃亡の六日前、関与が決定的となるメールが、証拠として弁護側に開示されました。
これで実刑は確定、五~六年は牢屋に入ることになる。
本稿ではWiLLに、闇世界・第一人者の分析 暴露寸前だった黒い資金操作、と題して掲載された田中秀臣氏と元山口組組長・猫組長の、高飛びゴーン、特集からの対談をご紹介する。
マネーロンダリングと国際指名手配―同じ経験を持つ猫組長にしか語れないゴーン事件の深層
ゴーン、ここまでか
田中
ゴーン事件といえば猫組長さん!
猫組長
私もゴーン被告と同じく、国際指名手配されていましたからね。
いち早く彼のマネーロンダリング(資金洗浄)も暴いたし、事件の第一人者を自負しています(笑)。
田中
ゴーン被告は昨年三月、十五億円の保釈保証金を支払って釈放されましたが、二十二億円もの大金を叩いてレバノンへ逃亡。
もちろん十五億円も没収され、総額三十七億円の逃亡劇でした。
なぜ今、このタイミングだったんでしょう。
猫組長
彼は二つの容疑―役員報酬を有価証券報告書に虚偽記載した金融商品取引法違反、リーマンショックで生じた私的な損失を日産に付け替えた特別背任罪で起訴されています。
有価証券報告書は日産の取締役会で承認されているので、サインした日産幹部はみな共犯。
問題は特別背任罪のほうです。
逃亡の六日前、関与が決定的となるメールが、証拠として弁護側に開示されました。
これで実刑は確定、五~六年は牢屋に入ることになる。
その後、捜査は奥さんのキャロル氏や、息子のアンソニー氏にも及びます。
ここで腹を括ったんでしょう。
田中
家族ぐるみの“黒い”資金管理がバラされるのを恐れた、というわけですか。
猫組長
無罪を主張するなら、堂々と裁判を受ければいい。
逃亡は有罪を認めたことにほかなりません。
ゴーン被告最大の失敗は、息子がCEO(最高経営責任者)を務める投資会社が、日産の資金をレバノンに送金した事実を否定したこと。
送金履歴はSWIFT(銀行間の国際通信ネットワーク)を調べれば必ずバレる。
送金を認め、お金の中身についてどう供述するか口裏合わせすればよかったんです。
私に相談すれば、教えてあげたのに(笑)。
田中
レバノンで行った記者会見である欧米のジャーナリストが、「日本という小さい監獄から、レバノンという大きい監獄に移った」と皮肉っていましたが、彼の人生はどうなるんでしょう。
猫組長
残念ながら、レバノンが終着駅です。
レバノン政府がどこまで庇うかは外圧次第ですが、アメリカが干渉したら一発で引き戻されることになる。
田中
レバノンはすごいですよ。
金持ちのために存在している国で、貧乏な家に生まれたら未来はない(笑)。
猫組長
富裕層は税制的に優遇されリゾート設備も充実。
金持ちにとっては天国です。
知り合いも結構、行ってる。
田中
レバノン経済は金融と観光だけで回っていますからね。
ところが、昨年の経済成長率は0.5%と著しく低く、今は金融危機的な状況です。
金融機関が高い金利を払えず、金利の半分を政府が補填していたりする。
とはいえ、政府も潤っていないので消費税を上げたり、スマホの通話アプリに課金しようとしているんです。
富裕層のために貧乏人から搾取する“逆マルクス主義”を突き進んでいますよ。
一般国民の不満も溜まり、昨年末にはデモも頻発。
若年層の失業率も四〇%近くあり、これは無職の若者を食わせる実家もカツカツになる数字です。
そこに富裕層の象徴であるゴーン被告がやってきた。
海外の富裕層に対するアピールにはなりますが、国内からの反発が予測されます。
「国際指名手配」経験談
猫組長
ゴーン被告が日本国籍なら、パスポートを失効させ、不法滞在で現地逮捕できるんです。
でも、彼はレバノン国籍。
IPCO(国際刑事警察機構)が最も緊急性の高い「赤手配書」を交付しましたが、強制力がないので意味がない。
田中
猫組長さんも「赤」だったんですか。
猫組長
私の場合は、一つ下の「青」から「赤」になりました。
「赤」になっても、各国の入管の対応は杜撰ですよ。
そもそも入国拒否するとその報告を上げるのが面倒なので、逮捕する気がない(笑)。
入管としては一回入国させて、さっさと出て行ってもらった方が楽なんです。
だから「面倒になるから、もう来るなよ」と言われて終わり。
私は指名手配中、バックパッカーみたいに一年半で四十ヵ国まわりましたから(笑)。
特にイギリス領のケイマン諸島やチャンネル諸島など、IPCO非加盟国は制度が“がばがば”。
富裕層が逃げて来やすいように、刑事警察を入れていないところも多い。
経済犯を匿(かくま)い、高い税金を払ってもらう。
それが彼らのやり方ですから。
田中
ノーベル賞級の経済学者で国際指名手配されている人がいるんですが、そのあたりを逃げ回っています。
猫組長
そういう国って、預金さえすればパスポートもつくり替えてくれる。
チャンネル諸国は二千~三千万円でイギリスのパスポートをつくることができます。
田中
そう考えると、ゴーン被告の密出国は映画化したいのかと思えるほど正攻法でしたね。
猫組長
そう、超古典的!
もっといい方法があるのに(笑)。
田中
それにしても、日本人は何事も性善説で考えてしまいがちです。
ゴーン被告も、保釈したらおとなしくしていると思ったんでしょう。
国外逃亡するなんて、日本人の発想では出てきませんから。
猫組長
だからゴーン被告に舐められ、いいようにやられてしまったんです。
性善説が通用するのは日本国内だけです。
外国人、まして金融犯なんてワル知恵の塊。
徹底的な性悪説で対応しないと。
みんなゴーンに騙された
田中
二〇一八年十一月、ゴーン被告が逮捕された翌日に解説を務めるラジオの生放送がありました。
事件の詳細が明るみになっていませんでしたが、有価証券報告書の役員報酬を過少記載した理由について解説を求められ、時期的に「リーマンショックだな」という勘が働きました。
資産運用が焦げ付き、補填しようとしたと。
どこよりも早くその可能性を指摘したつもりですが、猫組長さんのように背後にあるマネーロンダリングまでは読めなかった。
“黒い経済”を知り尽くした猫組長さんしかわからないことでしょう。
猫組長
ゴーン被告は逮捕後、日本の刑事事件の管轄を持たないアメリカの弁護士事務所「ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・ギャリソン」と契約を結びました。
バンク・オブ・アメリカやモルガン・スタンレーを顧客に持つ超有名事務所です。
ここでピンと来たんです。
国際的な金融犯罪に手を染めているな、と。
彼は、レバレッジ(資金を担保とし、何倍もの取引ができる仕組み)をかけたハイリスク・ハイリターンの資産運用を行っていました。
弁護士団は「給料の支払いが滞った場合のリスクヘッジ」と言っていますが、完全にウソ。
強欲で一円でも多くカネがほしかった。
そうでなければ、十八億五千万円の評価損なんて出るはずがありません。
田中
リーマンショックによる為替の急激な変動(円高)を予測できなかったんですね。
猫組長
輸出企業の経営者として失格でしよ(笑)。
その後も、素人の投資家のように「いつか戻るだろう」と信じて対策を講じず、損失は膨らむばかり…容易に想像できますよ。
そして悪質な国際金融犯罪(=マネーロンダリング)に手を染めた。
「スタンドバイL/C」という信用状を用いた手法なんですが、この信用状を個人の取引で使うことは、まずあり得ません。
銀行に相談したら「アンタ、バカですか」と言われて終わり。
ところが、日産という信用があるので、新生銀行は受け付けた。
メガバンクならコンプライアンス(法令遵守)違反で絶対に通りません。
役員級の特別案件でしょう。
田中
当時の新生銀行の執行役員はいま、日銀の審議員を務めています。
来年、任期が切れたら、ゴーン被告とどんな取引をしたのか突っ込まれるでしょう。
猫組長
新生銀行は、長銀(日本長期信用銀行)の流れを汲み、経営破綻したあとは米国の企業再生ファンドを中心に買収されました。
役員にも外資系がいて、マネーロンダリッグの匂いがプンプンする。
新生銀行も″真っ黒“なんですよ。
ちなみに、このマネーロンダリングは「流浪の民」と呼ばれる伝統的な手法で、見る人が見たらすぐわかります。
もっと知りたい方は、拙著『金融ダークサイド』(講談社)を読んでみてください。
田中
新生銀行と取引している頃、ゴーン被告は円安にするよう主張していました。
これは方向性として正しい。
経団連や大企業の経営者は消費増税など誤った経済政策を囗にするのに、彼はいいことを言うなと思ったものです。
だからツイッターでも褒めました。
でも何のことはない、ゴーン被告個人の損失を減らすために円安を求めていただけだった(笑)。
いくらなんでもそこまで見抜けませんって。
私もゴーン被告に騙されてしまいました……。
この稿続く。

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