人命より政治的安定を優先した中国共産党――野獣食と隠蔽が生む疫病
月刊WiLL掲載の佐々木類氏の論文の続きとして、新型肺炎をめぐる中国共産党の隠蔽体質、人命より政治的安定を優先した武漢・湖北省の実態、野生動物を食べる習慣、SARSやASFとの関連を論じる。
2020-02-27
とりわけ今回の惨禍は、湖北省や武漢市における人民代表大会開催前の政治的安定を人命より優先させたという批判が中国国内でも起きている。
以下は前章の続きである。
習氏は新型肺炎との戦いを「人民戦争」と呼んで全人民に当局への協力を呼び掛けている。
だが、そもそも一党支配下での人権弾圧、保身と責任逃れからくる隠蔽体質が招いた人災であることは間違いない。
とりわけ今回の惨禍は、湖北省や武漢市における人民代表大会開催前の政治的安定を人命より優先させたという批判が中国国内でも起きている。
二月中旬時点で、中国国内の感染者は七万人以上、死者もSARSを上回る二千人近く、日本国内もクルーズ船客を含む百六十人以上の感染が確認されている。
発生源の武漢市に滞在していた日本人男性は新型肺炎が原因で死亡した。
本稿が出ているころには、これらの数字がさらに増えているのは間違いなかろう。
机以外の四つ足は食べる
なぜ中国国内で疫病が流行るのだろうかー。
ひと言でいえば、人と獣の距離が近いからだろうことは、素人目に見ても分かる。
家畜との生活が日常で不衛生だとか、そういうレベルではない。
食材として台所に上るのがふつうだという意味だ。
日本人も、一部の欧米人から見たら卒倒するようなクジラだとか、生魚を寿司だ刺身だといって食べている。
その欧米人も、ジビエとかいって、鳩やアライグマなど鳥獣を食べる。
だから、お互い他国の食文化についてとやかく言えないのだが、中国人の場合、それにしても人と獣の距離が近すぎやしないか。
筆者も小さいころから、中国では机以外の四つ足は何でも食べると教えられた。
今回の新型肺炎も、武漢市の海鮮市場が感染源として疑われる。
海鮮市場とはいえ、そこには竹を主食とするタケネズミ、ハクビシン、キツネ、コウモリといった野生動物が食用として販売されているという。
武漢市の場合、約32km離れた郊外に国立の病毒研究所があり、そこの実験動物が逃げて家畜と接触したか、食用として市場に出回った疑いが浮上している。
日本人からみればゲテモノではあるが、知人の中国人男性に言わせれば高級食材で、富裕層が好んで食すのだという。
この中国人男性は、私の取材に対し、「春節で福建省に帰り、好物のタケネズミを食べようと思ったヨ。
でも(新型肺炎で)帰れなくなったヨ」と残念そうに首を振る。
この男性のイチ押しは猟犬のシェパードだ。
両手で犬が走る格好をしながら、「走るから筋肉が締まっていて美味しいヨ。
ドーベルマンも貴重で美味しいけど、シェパードの方が美味しい」のだそうだ。
念押しする。
彼の言っていることは足の速さではない。
肉の旨味である。
古くは14世紀に大流行したペスト(黒死病)も、中国の雲南省地方に侵攻したモンゴル軍がペスト菌を媒介するノミと感染したネズミを中世ヨーロッパにもたらしたことによって大流行したものとされる。
度重なる戦争で、野獣など食料の現地調達に迫られる将兵や繰り返す飢饉に苦しむ人々がネズミなどの野生動物に手を出すことの繰り返しも、疫病を流行らせる背景になったと考えられる。
最近では、2003年、中国南部の広東省を起源としたSARSがそうだ。
感染源で疑われたのは、コウモリ、ハクビシン、タヌキ、ネズミだった。
一昨年には、ヒト感染はしないが、アフリカ豚熱(ASF)が中国で大流行し、日本の水際まで追っている。
感染源はネズミなどの小動物の疑いが持たれている。
日本では、この感染豚を食肉としてソーセージなどに加工し、その残滓を野生のイノシシが食べて、養豚場の豚に感染させるというルートが考えられている。
今後、衛生環境がいかに改善されても、疫病発生の根本原因とみられる野獣を食べる習慣がなくならない限り、疫病発生の危険もまた、なくならないであろう。
この稿続く。