そうなることがわかっていながら、こいつに投票した岸田や菅をリーダーとする自民党議員こそ問題で、繰り返しになるけど、自殺行為に等しいんですよ。 特に、岸田は直前まで首相を務めていた。 まず、この男を糾弾すべきです。
以下は、本日発売された月刊誌Hanadaにp118からp128に渡って掲載されている、堤堯氏と久保紘之氏の連載対談からである。本稿は、明日、投票に行かれる有権者全員が必読である。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
鳩山と同様、石破もルーピーだ
まるで在庫一掃内閣
堤
いやあ、まさか石破茂が総裁・総理になる時代が来るとはねえ。世も末、自民党も末期的症状だな。
彼が選んだ内閣の顔ぶれをみると、初入閣が十三人、再任が二人、閣僚経験者の再入閣が四人。
若手でもないのに初入閣のやつが多い。
これまで党内で燻っていたのが大挙して内閣入りした。
「在庫一掃内閣」つてとこだな。
そもそも、首相の石破茂自体が「在庫」の最たる存在だったからね(笑)。
久保
なかでも、「安倍は国賊だ」と発言して役職停止処分を受けていた村上誠一郎なんか、総務大臣にしてもらって元気いっぱいだよ(笑)。
村上は議員経験だけは長いけれど、入閣は二十年前に一度あっただけだし、これまでに何らの功績も残していない。
いわば自民党の”穀潰し”。
以前、村上についてこんな川柳を作ったことがあります。
「国賊とコクゾウムシに罵られ」(笑)。
穀象虫とは、別名コメ喰い虫。
つまり、国家の備蓄米や兵糧を食い荒らす穀潰しのこと。
いくら何でも、こんなやつを内閣の一員に据えるかねえ。
堤
自民党としては、顔をすげ替えて、新内閣への御祝儀支持率が高いうちに解散総選挙をやろうというハラだったんだろうけど、組閣直後の支持率は産経・FNNの調査で50%そこそこ。
解散後の共同通信の調査でも46%と、たいしてあがっていない。
単独過半数はおろか、自公合わせての与党過半数も危ういかもしれない。
それよりなにより懸念されるのは、党内分裂だよ。
前首相・岸田文雄は、いわゆる政治資金不記載問題を利して、露骨な処罰人事で徹底した安倍派潰しを図った。
安倍派五人衆をターゲットに、今耕弘成に党籍離脱勧告、西村康稔と下村博文に一年間の党員資格停止、萩生田光一と松野博一には役職停止処分といった具合だ。
岸田のこの安倍派潰しを、石破は輪をかけて踏襲した。
最大派閥九十八人の安倍派から一人の入閣者もいない。
総裁当選の第一声、「これからはノーサイド、一丸となって日本創生に取り組む」と述べたセリフはどこへやら、いかにも露骨な報復人事だ。
それだけではない。
不記載議員によっては党の公認を出さない、たとえ出しても比例重複は認めない。
公認権を使い分ける差別人事だ。
岸田と石破、この二人の対応で、党内の人心はささくれ立っている。
仮に選挙で敗退した場合、石破はどう責任を取るつもりなのかね。
編集部
総辞職でもしてほしいです。
久保
いや、奴がすんなり総辞職することなんか金輪際あり得ない。
引きずり下ろすしか手はないでしょう。
安倍路線に対する挑戦状
堤
先の国会の最終日、十月九日に野党は党首討論のあと、内閣不信任案を出した。
石破は解散の緊急動議でこれを潰したけど、仮にこの内閣不信任案が採決されれば、自民党からかなりの賛成票が出たんじゃないか。
これはかつて石破自身がやったことだよ。
一九九三年、時の宮澤喜一内閣に野党が不信任案を出し、自民党からかなりの賛成票が出て可決された。
石破も哲成票を投じた一人だ。
結果、総選挙になって自民党は過半数を大きく下回り、やがてそれが宮澤退陣、細川護熙政権の誕生につながる。
この時の政局展開は小沢一郎の一人舞台だ。
非自民非共産の八党会派連立の枠組みを作り、わずか三十数名の日本新党の党首・細川護熈を首班に担ぐ工作をやってのけた。
この時期だよ、石破が小沢にすり寄って新生党に入党したのは。
久保
今回、政権を獲った石破は、岸田の安倍派潰しを受け継ぎ、それに輪をかけたような苛烈さで、安倍の遺産潰しに狂奔している。
そのさまは、死んだ安倍に向けてなおも怨恨を晴らすかのような執拗さで、泉下で安倍も呆れているのではないか。
岸田や菅をはじめ石破に投票した連中は、奴を急場しのぎの、いわば”雇われマダム”くらいに思っている。
かつて三木武夫を担いでロッキード事件の難局を乗り切って、役目が終わるや三木をスケープゴートにして引きずり降ろしたようにね。
ただし、三木の時は田中角栄こそ刑事裁判にしたものの、田中軍団は健在。
構造的腐敗の温床となった保守本流勢力も、その存続を脅かす抜本改革には一致結束して抵抗した。
これが三木降ろし劇です。
だが、石破の場合はどうかな。
おそらくやつは、何か何でもその座にしがみつこうとするはずです。
問題は総選挙の結果、石破を引きずり降ろせる勢力が出てくるかどうか。
岸田と菅じゃあ、そのうち石破をコントロールできなくなると思います。
堤
仮に石破降ろしをするとなったら、誰が中心になれるかね。
高市一人では難しいから、コバホーク(小林鷹之)と組んで、石破降ろしをやってもらいたいね。
久保
まあ、その二人が組むしかないでしょうね。
非主流とか党内野党とかいう曖昧な形ではなく、堂々と「反主流」を名乗る勢力が生まれるかどうかです。
うまく立ち回ろう、おこぼれにあずかろうなんて考えるようじゃ話にならないし、政治家である以上、行動で示さないと。
何より、石破政権の仕掛け人は菅と岸田なんだから、あの二人をどうにかしな
い限り、この構造は崩れませんよ。
堤
菅は長く安倍と組んだ。
なのに安倍が最も嫌った男と知りながら、なぜ石破に肩入れしたのか。
安倍を「国賊」と呼んで処分されたような男を閣僚にする石破を支持するのかねえ。
だいたい、「国賊発言」の村上というのはどういう男なんだ。
村上正邦は知っているけど、村上誠一郎なんて聞いたこともない。
久保
村上水軍の末裔だと自称していて、東大を出たあとに三木派を継いだ河本敏夫の秘書をやっていた男です。
まあ、一人の奇矯な男でいるぶんには戯言ですませられるけれど、内閣に引き入れたら話は別。
石破にとって村上はいわば内閣の思想的支柱であり、安倍路線否定の旗印のようなもの。
石破は自分で反旗を翻す度胸はないから、村上を入れることで反安倍への路線転換を示し、積年の安倍へのルサンチマンを晴らそうとしている。
そうした姑息で陰湿なやり方が石破流なのです。
つまり、石破が「国賊発言」の村上を内閣に迎え入れたのは、安倍路線に対する挑戦状を叩きつけたに等しく、単なる人事レベル、政局レベルの話ではありません。
以前、中曽根康弘に話を聞いた時に、「安倍政権になって、吉田以来の悪しき憲法体制の流れが、ようやく我々保守本流の手に戻った」と言っていました。 つまり、アメリカの統治の時代からようやく転換して、戦後政治の総決算としての実りを得て、日本が提唱した国際秩序のあり方が採用されるところまできた、ということです。
安倍の国際政治への貢献を世界の先進主要国の首脳が称賛し、その早すぎる死を悼んで、国葬にも世界の主だった王室はじめ大多数の首脳や政府関係者が参列したことを思えば、それは明らかでしょう。
それが石破政権の誕生で「国賊」の烙印を押されるに等しい形で否定され、根こそぎひっくり返されようとしている。
しかも、その石破を自民党総裁に担ぎ出した”主犯”は、政治の悪しき部分を継承した宮澤喜一の親戚の岸田ときている。
これでは、曲がりなりにも吉田の良質な部分を継承したと自負する孫の麻生が怒るのも無理ありません。
これは大変な危機ですよ。
ようやく日本が日本であることを取り戻しつつあるというなかで、この流れを全く逆回転退行させるような政権が誕生したんですから。
実は僕が驚いているのは、この危機的状況を保守派の論壇がほとんど理解していないかに見えることです。
これはただの政権交代劇じゃない。
今回の石破政権の誕生を新たな「思想戦」として受け止めなければ、自民党も日本も瓦解する。
保守派は雑誌も含めて総力を挙げて戦う必要があるんです。
自民党にとって、石破を選ぶなんて自殺行為に等しい。
石破を単なる小物と見て、軽々に扱っている場合ではないんですよ。
これを脅威に感じないようであれば、保守政治を語る資格はない!
石破降ろしの狼煙を上げよ
堤
石破は二階派の武田良太から推薦人を借りたから、二階派に関しては不記載問題があってもお咎めなし。
一方、旧安倍派に対しては、処分された幹部は選挙でも非公認。
こんなあからさまなやり方があるかね。
久保
引退した元衆院議長の伊吹文明が「こんな党内融和を無視した露骨な情実人事は初めて見た」と、憮然とした表情で話していましたよ。
自民党内からも、「先ず隗より始めよ」の声を上げるべきでしょう。
むろん、安倍派の連中が主導すべきです。
仮に今回落選したって、自民党員であることに変わりはありませんしね。
堤
石破に向けて「あの野郎」と思っている議員はたくさんいるはずだ。
選挙のあとにどうなるか、見ものだね。
久保
そういえば、石破が総裁選出馬直後に、アメリカのシンクタンクのホームページにアジア版NATOに関する英語論文を掲載したことが騒ぎになっていますね。
これも、安倍が第二次政権で示した「自由で開かれたインド太平洋構想」(FOIP)の向こうを張るつもりで出したものでしょうが、外交・防衛の専門家の間では「ド素人の戯言」とケチョンケチョンですよ。
アメリカでも評判が悪くて、産経の古森義久が「鳩山と同様、石破もルーピーと呼ばれている」と書いていました。
堤
日本国内の専門家の多くからも苦言を呈されていたけれど、総理に就任して撤回した。
久保
たしかに、そのあとは何も言っていませんね。
所信表明演説でも触れておらず、外務大臣に就任した岩屋毅が「直ちに実現は難しい。中長期的に検討する話」と言っただけ。
でも、初顔見世でこの失態は大きい。
「ルーピー石破」はずっと尾を引くと思いますよ。
堤
石破は日米地位協定の改定も持ち出したけど、これも大ブーイングだ。
いまそんなことを言い出したら、日米関係がグダグダになってしまう。
さきごろ、ラオスのビエンチャンで開かれたアセアンの会議に石破も出席した。首相として最初の外交だよ。
石破は、アジア版NATOにも日米地位協定にも一言も触れなかった。
これまでは党内野党だから好き勝手なことを言っていられたけど、総理になったらそうはいかない。
どうやらそれがわかってきたらしい。
ところで、石破の表情を見ていると、いかにも小狡そうな上目使いをする。
奥さんから「それ、やめなさい」と言われるけど、生来の癖だからやめられない。演説はハキハキしてないし、内容は「巧言令色鮮し仁 」の言葉を思い起こさせる。
久保
そんな上等なものではなく、単なるペテン師(笑)。
鳩山と一緒で、就任直後から早くも国を危うくしている。
そうなることがわかっていながら、こいつに投票した岸田や菅をリーダーとする自民党議員こそ問題で、繰り返しになるけど、自殺行為に等しいんですよ。
特に、岸田は直前まで首相を務めていた。
まず、この男を糾弾すべきです。
つくづく思うのは、安倍の勘が鋭かったことですね。
「石破だけは駄目だ」と本能的に分かっていた。
北一輝の辞世の句「若殿に兜取られて負け戦」は、昭和天皇に二・二六クーデターを鎮圧された時に詠んだものですが、もし小泉進次郎が勝っていたらまさにこの句だと思っていたけれど、考えてみれば「若殿」を「バカ殿」に変えれば石破でも当てはまる。
バカ殿によって、日本を間違った方向に進められるわけにはいかない。
石破降ろしの狼煙を上げなければ、大変なことになりますよ。
僕がこう言うと、「小泉や石破の過大評価じゃない?」という批判が必ず返ってくるんだけど、奴らは国家や社会に害をなすバチルス(菌)で「日毎に醜行汚俗を算出する化身)(内田魯庵『社会百面相』)。
日本の伝統・文化、つまり国家の屋台骨を腐食する腐敗菌なんですよ。
除去は早いに越したことはありません。
本来の小選挙区制に
堤
ことほど左様に、石破には問題が多い。
だから、今回の衆院選で石破にあまり勝たせたくない。
だからと言って、立憲ごときガラクタ政党に政権を渡せない。
渡せば「悪夢のような三年半」の再現だ。
久保
立憲だって割れるでしょう。
野田と枝野の勢力は方向性が違いますから、自民も立憲も割れて政界再編が起こる可能性は高い。
問題は、その時に誰が野田と一緒になるのか。
十中八九、石破でしょう。
堤さんのご指摘どおり、奴は自民党を出たり入ったりしている常習犯ですからね。
その勢力が一つのコアになって、本来の自民党保守本流とともに二大政党を形成し、イギリスの保守・労働両党のように政権交代によって相互にチェック・アンド・バランスを行うことで、議会制民主主義を本来の目的にそった制度に作り変える。
そのためには、現行の小選挙区比例代表並立制というデタラメな既成政党間の妥協の産物を、本来の小選挙区制に改める作業が不可欠なのです。
現行の並立制は「小選挙区制と比例代表制のそれぞれの長所を相殺し、短所を助長する最悪の制度」と、早くから専門家の間では指摘されていた欠陥制度ですからね。
今回の”裏金問題”に端を発する政治倫理の一番の問題は、倫理を議員個人の自覚に拠って実現しようとしていることですが、こんなことはいつまでたってもできるわけがない。
古代ギリシャの時代からできずにきている話ですから、聖人君子でない限り、まず不可能です。
倫理と権力は、マックス・ウェーバーの言うとおり、一方は「心情倫理」、他方は結果責任を問う「責任倫理」という原理的に相反するものだから、権力を持つものが倫理を実現することは困難を極めます。
しかし一方で、政治の論理は単純な権力の論理として自己完結できるほど簡単なものではない。
だから、いまも”裏金問題”などという取るに足らないはした金で自民党政治が立ち往生しているわけですからね。
では、どうすべきか。
政治家個人に倫理を求めるのではなく、システムで実現するという道を取ることです。
イギリスは小選挙区制による二大政党制によって、不正があれば政権交代するという形で倫理を達成している。
野田は選拳公約で、「政治倫理を達成するためには政権交代する以外にない」と訴えているんでしょう。
ならば、「本来の小選挙区制に戻し、政権交代可能な二大政党制に戻すべきだ」と野田が発破をかけて、政界再編後の二つの政党が賛成すれば、そこで初めて倫理が達成される。
石破が野田と協力してこれを実現できれば、歴史に名が残せますよ。
その時は「瓢箪から駒」政権なんて言われるのかな(笑)。
野田佳彦は財務省御用達編集部「政権交代可能な二大政党制の実現」は野田氏の悲願で、「これが達成できなければ、死んでも死にきれない」なんて言っています。
堤
それより気になるのは、野田が「財務省御用達」だってことだ。
野田は2012年の政権末期に三党合音を結んで、二度にわたる消費税率アップへの道筋をつけた。
対して安倍は、二度にわたって消費税率アップを延期した。
その間、俺は安倍に会うたびに言った。
「財務官僚は富を生まない。政府の財布を支えているのは民の財布です。その民の財布を削っていいことは一つもありませんよ」とね。
安倍は結局、いったん決められた三党合意を実施せざるを得ない。
「五%↓八%」と「八%↓一〇%」アップで、そのつどアベノミクスの効果に水を差した。
その間、税率アップを渋る安倍に対して、財務省は与野党を通じて安倍降ろしを画策した。
「財務省御用達」は野田だけではない。先の野田人事で立憲の幹事長に抜擢された小川淳也が、テレビの討論番組で「将来の消費税」について問われ、なんと「二五%」と答えたのを見て驚愕した。
一万円の買い物をすれば二千五百円を財務省が叫め取る。
GDP(国内総生産)の六割は消費が占める。
これに二五%の税率を課せば、消費は間違いなく冷え込む。
なのに、野田は小川の「二五%案」に理解を示していると聞く。
恐ろしい話だ。
石破はどうか。
石破が決選投票で増やした百四十三票の多くは、岸田派と菅が差配した小泉進次郎票からきている。
岸田派の宏池会は、党の税制調査会長の宮澤洋一をはじめ財務省OBの牙城だ。
進次郎も増税派で、石破は彼らの主張を受け入れざるを得ない。
かくて石破と野田、与野党を通じて増税シフトができた。
総裁選の最終場面、勝利宣言する石破の背後で、岸田の含み笑いが印象に残った。
この稿続く。