なぜなら安倍を追い詰め、病状を悪化させ、凶弾に曝した責任の大半は朝日新聞の底意にあるからだ。 船橋もその一端を担った。
以下は定期購読専門月刊誌テーミス今月号に掲載されている高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。
元朝日新聞・船橋洋一氏の安倍論評は嘘で固められた
マハティールの「日本なかりせば」講演内容も無視したが
高山正之
「拉致は日朝正常化の障害」と
産経新聞には「真実を報道する」という意味で、ためになるコラムが多い。
中でも阿比留瑠比の「極言御免」は毎回、新鮮な驚きがあって十分楽しめ、同時に現実の虚ろさを考えさせられもする。
なんでかくも刺激的なのかというとネタ元が安倍晋三その人だからだ。
阿比留ほど長く深くそのネタ元に食い込んだ記者はいない。
まさに他の追随を許さぬ存在だ。
その阿比留が先日触れたのが元朝日新聞主筆の船橋洋一が上梓した安倍晋三政権クロニクル『宿命の子』だ。
最初にこの5千円もする大著のことを耳にしたとき、なんで朝日の船橋が、と思った。
なぜなら安倍を追い詰め、病状を悪化させ、凶弾に曝した責任の大半は朝日新聞の底意にあるからだ。
船橋もその一端を担った。
それも事実報道でなく、嘘で固めた誤報を通して。
もっとはっきりいえば報道の名を借りたテロを船橋らが仕掛け続けたからだ。
そんな船橋がどれほど「政治家安倍晋三」に踏み込めたのか。
そつ一端を阿比留は同書の「金正恩の章」で指摘している。
その章では船橋が「トランプと金正恩の拉致交渉は大失敗だった」と切り捨てている。
しかし阿比留はその辺を安倍本人から直に「金正恩がトランプに促され、安倍との会談の用意はあると答えた」と聞いているという。
対して船橋の話は安倍に楯突くだけで何の実績もない外務省の言い分そのままだ。
一方の言い分だけで書く。記者としての適格性をもろに欠いている。
だいたい船橋を含め、朝日が偉そうに北の拉致問題を書く立場にはない。
めぐみちやんや有本恵子さんの拉致が事実となったとき、朝日は社説で「拉致問題は日朝正常化の障害だ」と書いた。
日本人は北朝鮮と国交がなくても気にもしない。
それより拉致された日本人の解放が遥かに大事だ。
船橋はそれも分かっていないうえに、主筆として無知も過ぎる。
例えば東ティモール問題だ。
日本との交渉は古い。
戦前、日本が東南アジアに航空路を延ばそうとしたとき、英米仏蘭が彼らの植民地上空すら飛行を禁じた。
ただポルトガルだけが東ティモール乗り入れをOKしてくれた。
横浜からサイパン、パラオ経由で6千キロメートル。
大日航の97式飛行艇が飛んだ。
ところが日米開戦直後、豪蘭軍が勝手に東ティモールに侵攻し、大日航社員ら30人の日本人を拘留した。
日本軍は蘭領インドを制圧後、ポルトガル政府の許可を取って上陸し、豪蘭軍を叩いて人質を救出した。
当時、「ポルトガル人総督は島民の反乱に悩み、日本軍に駐留と治安を顆んできた」(山下信一昭和女子大教授)。
日本軍は「総督に島民に課した塩税をやめさせ、凶器となるからと禁じていた農具の使用を認めさせる条件で駐留を決めた」(野村佳正千葉科学大教授『軍事作戦と軍事占領政策』)。
東ティモールで島民大虐殺と嘘を
島民は日本軍の指導で水田を作り、飢えから解放されて大喜びした。
日本軍のために島民経営の慰安所も作られた。
「島民は軍事でも協力した。豪州からスパイが潜入すると島民が通報し、捕まえて逆に撹乱情報を流して豪軍の侵攻を抑えた」(山下教授)
先の戦争の中で信じられないほどうまくいった軍事作戦例だが、戦後、GHQの指導で日本軍は悪者にされ、学者もメディアも戦史の改竄に狂奔した。
後藤乾一早大教授や倉沢愛子慶大教授らは「東ティモールは日本軍が侵攻して4万人島民を殺し、略奪と強姦に明け暮れた」と嘘を捏ねた。
信じられないことだが、それを朝日は取材もせずに紙面に載せても来た。
船橋も後藤らの嘘を鵜呑みにして「日本は(島民大虐殺という)過去を反省しろ」と書いた。
おまけに東ティモールの白人混血児らが仕組んだ独立詐欺話にも易々騙されて「日本政府は彼らに償い金を払え」と血税2千億円を出させた。
日本は今も毎年2億円をくれてやっている。
日本人は学者と新聞社の主筆が共謀して嘘をいうとは思わないから「日本軍4万人虐殺」を今も事実だと信じている。
船橋がまともでないもう一つの例が92年10月、香港で開かれた東アジア経済フォーフムでのマハティールの「日本なかりせば」講演だ。
「もし日本なかりせば、欧米が世界の工業を独占し、車やテレビなど工業製品を我々に好きなだけ高値で売りつけただろう。我々は彼らに製品の原材料を安く供給するだけだっただろう」
「しかし日本は我々に惜しみなくノウハウを教え技術を供与した。だからアジア
諸国は車も冷蔵庫もテレビも自前で製造できた」
変な「白人崇拝意識」の頂点に
「もしも日本なかりせば、我々は今でも白人国家の奴隷として貧しい生活を強いられていただろう」
何とも刺激的な、でも真実を衝いた講演だった。
船橋はその講演会場にいてそのスピーチを聞いていた。
講演半ば、腹を立てた多くの白人どもが席を蹴立てて出ていくのも目撃していた。
大特ダネだった。
しかし船橋はこの講演の内容も、白人たちの振る舞いも記事にしなかった。
不幸なことに他の日本人特派員はこの講演を無視していた。
日本人特派員は白人が話せば聞いて記事にもする。
アジア人や黒人が講演したところで取材もしない。
変な白人崇拝意識の頂点にいたのが船橋洋一だった。
『宿命の子』はそういう人が書いた。
安倍が暴いた朝日の最大の罪過、慰安婦の嘘にも触れてはいるか、罪の意識は欠片も見せない。
東京裁判史観に立つ男の薄っぺらな安倍晋三観なんて何か意味があるのか。