科学の名で政治は何を動かすのか――地震予知・温暖化対策と、恐怖を利用する権力への問い
2024/03/23
大地震が予知できなことは科学の常識だ
池田教授の「机上の放論」
本論文は、2011年7月1日に、生きる確率25%と医師に宣告されて、8か月間、入院していた北野病院の病室から発信した章である。
当時、私が定期購読していた週刊朝日7/8号に掲載された池田清彦教授の連載コラムからである。
今こそ、日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。
文中黒字化は私。
地震学者のロバート・ゲラー東大教授が四月十四日付の英科学雑誌ネイチャーの電子版に、今こそ日本政府は地震が予知できないことを国民に率直に伝えるべきだ、との意見を発表した。
大地震が予知できないことは以前から科学界の常識である。
政府は地震予知という不可能な幻想の下で膨大な税金を浪費してきた。
大地震を予知するという大義名分の下に、大規模地震対策特別措置法を作り、所轄官庁と一部の特権的な地震学者は甘い汁を吸い続けてきたのだ。
国民の恐怖を煽って、予防原則というあやしげな理念を楯に、できもしないことをできると言い倣して、税金を湯水のように垂れ流す構図は、地震予知も地球温暖化防止も全く同じである。
私はかつて、科学的にいかがわしい理論ほど政治的には重要である、と述べたことがある。
地球温暖化や大地震といった地球規模の現象では、それを予測する理論の当否を実験的に実証することは不可能なのだ。
なぜなら、理論に基づいて大地震や温暖化を実験的に起こすことができないからだ。
しかし、これらの現象は人々に対して極めて重大な影響を与えるために、これらの現象を予測したりコントロールできたりするという言説は政治的には極めて強いメッセージとなり得る。
そこで科学的には実証不可能な理論が政治的に極めて強い理論として跋扈することになる。
権力とは好コントロール装置である、とこれもまたかつてどこかに書いたことがあるが、何であれ、コントロール可能という言説は、権力にとって魅力的に思えるのだろう。
確かに科学の黎明期には、物理法則と、物質の配置さえ分かれば、未来はすべて予測可能になるはずだと夢想されたことがあった。
これをラプラスの魔と呼ぶ。
現実的にも理論的にもラプラスの魔は成立しないことが今でははっきり分かっているが、科学が未来の現象を予測できないことは、別に難しく考えなくても当たり前ではないか。
我々人間は自然の一部であってその逆ではない。
一部が全部を理解できないことは小学生にも分かる。
大地震対策にせよ温暖化対策にせよ、法律を作れば税金を垂れ流すことはできる。
しかし、大地震を予知したり、温暖化をコントロールしたりすることはできない。
なぜならば、地震や気温は法律を守らないからだ。
都市というほぼコントロール可能な空間に暮らしている人々はそんな当然のことを忘れてしまったのかもしれない。
*ここからは、特に、なぜならば、地震や気温は法律を守らないからだを、史上最低の「下品」である、管直人と、もはや、日本国に対する犯罪人と言っても過言ではない孫正義、この邪ブラザーズに、私から、目を、かっぴらいて、読め、と、送る。
いけだ・きよひこ 1947年、東京都生まれ。東京都立大学大学院理学研究科博士課程修了。生物学者。現在、早稲田大学国際教養学部教授。
主な著書に 『環境問題のウソ』、『ほんとうの環境問題』(養老孟司氏との共著)など。